第7話「始まりの姫 ―第一のレガリアの記憶―」

――500年前。

大陸はまだ統一されておらず、各地で王が争い、神殿が支配する時代。


その中心にあったのが、「統律神国イーラ」。

神の名のもとに“秩序”を守り、違反する者を裁く――絶対神政国家。


その王女が、彼女だった。


名はアミリア=イーラ=レガリア。

金髪碧眼にして神聖血統、だがその瞳はどこか“怒り”に燃えていた。


「“神の名”で戦争を正当化? ふざけないで。

 私は……“この国を壊す”ために生まれてきたの」


彼女は、神の血を引く王族でありながら、

神の権威を否定した“禁忌の反逆者”。


アミリアの覚醒は、ある日、神殿から送られた“処刑命令”から始まった。

民衆の中に、自我を持った機械人形(ホムンクルス)がいたことが問題とされ、その存在を「世界の法」に反するとして“処分”が命じられた。


だがアミリアは、それを拒否した。


「人形だろうが魔族だろうが、“生きてる”ってだけで十分だと思わない?」


その一言が、国家の命運を狂わせる。


神官長、将軍、父王――全員がアミリアを「異端者」と断じ、彼女は王城を追放された。


だが彼女は引かない。

むしろ、その夜、彼女は《神書庫》に侵入し、“世界秩序”の真実に触れる。


「……この世界、“間違ってる”」


歴史は改ざんされていた。

“神の奇跡”とされるもののほとんどが、“世界秩序機構”による演出。

異端とされた者のほとんどが、“ただの異能者”か“自由な思想”を持った人間だった。


すべてを知った彼女は、ついに自らの名を選んだ。


「これが、私の名前。

《レガリア》――“王権を超えた証”って意味らしいわ」


彼女は、あらゆる縛りを捨て、革命を起こす。


民を解放し、知識をばらまき、隠された魔術を再興し、

ついには“神の軍”との戦いを挑んだ。


その戦いの名は、後に“反逆の神暦”と呼ばれることになる。


だが――


「私は、“勝てなかった”」


彼女は語る。燃え落ちる神殿の中、倒れた仲間たちに囲まれて。


「世界は、変わらなかった。でも――残すことはできた。

“名前”を。思いを。……この戦いを、いつか誰かが継いでくれるなら――」


彼女は微笑む。


「それで、私は報われる」


そしてその名は、後世へと継がれる。


“反逆者レガリア”――

時代を越え、七人目の少女に宿るために。



場面は現在へ戻る。

空を見上げるレガリア(現代)。


「……見たよ、あんたの記憶」


アーヴィンが静かに頷く。


「第一のレガリア様が託した“名前”。あなたが継いだものです」


「うん、でもさ」


レガリアは笑う。


「私の“やり方”でやるから、覚悟しとけよ、初代姫」

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