第3話「“転生者狩り”と名乗る少年」

魔獣との激戦から一夜。


レガリア=エルフェリア――もとい、元・女子高生の神崎ユイは、城の医務室で寝転がっていた。


「……腕、痛っ。ていうかマジで、斬ったよね私。あんな化け物を……」


左手に包帯、右手には力が戻ってきている。だが、彼女の視線は天井ではなく、剣の置かれた机を見つめていた。


《王紋剣(オウブレード)》――魔王の血族だけが使える“世界に嫌われた剣”。


(あの剣を使った瞬間……体の奥に、変な熱が走った)


戦いの中でレガリアは、ただの“転生者”ではないことを確信した。

この世界では“彼女の存在そのもの”が、世界の理に反しているのだ。


「……“転生者”ってのは、そんなにヤバい存在なの?」


そのとき、窓から風が吹き抜けた。


シュッ――


次の瞬間、誰かの影が飛び込んできた。


「!」


反射的に剣をつかむ。


「おっと、反応だけは一人前って感じだな、レガリア=エルフェリア」


そこに立っていたのは、黒髪の少年。鋭い目つきに、異様な気配。左目には黒い刺青のような印が浮かんでいる。


「お前……誰?」


「“転生者狩り”の者だ」


ズシャッ!


言葉と同時に、床が裂けた。彼の剣が、まるで空気を断つように軽々と振られる。


「待てってば!! 私まだ朝メシも食ってな――」


バシュッ!!


ギリギリでかわす。風圧で頬が切れた。


(ヤバい、マジで殺る気だコイツ!!)


「名乗る名前はない。ただ、“世界の意志”に従っているだけさ」


「“世界の意志”? また出たよ中二ワード!!」


「転生者はこの世界の“バグ”。だから排除する」


「じゃあなんで喋ってんの!? いきなり斬ってこいや!」


「言われたとおりにしてやろうか」


刹那、黒い剣が閃く。


だがその瞬間――


ドオォォォンッ!!!


二人の間に、爆発が起こる。


煙の中から現れたのは、銀髪の執事・アーヴィン。片手に巨大な槍、もう片手で結界を張っていた。


「この子には……まだ“壊させない”!」


「……またお前か、アーヴィン。元・世界秩序機関の番犬が、なぜ裏切った?」


「彼女が“世界を変える鍵”だと気づいたからさ」


その言葉に、レガリアは目を見開いた。


(私が……鍵?)


爆炎の中、少年の瞳が赤く光る。


「この世界は、お前の存在を許さない。次は――首を取りに来る」


そして、少年は風のように姿を消した。


残されたレガリアは、槍を構えたままのアーヴィンに問いかけた。


「ねえ、今の……何? あいつも転生者?」


「……違う。彼は“正規の住人”だ。そしてお前の敵になる」


「……面倒な世界だな、ほんと」


でも、レガリアの口元はわずかに笑っていた。


「だったらこっちだって、全力でぶっ壊すしかないよね?」


燃えるような青い瞳。

彼女はもう――ただの女子高生じゃなかった。

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