翌朝。母に見送られ元気良く出発した島崎美織は、三軒隣の屋敷の前で立ち止まり、玄関の呼び鈴を押す。

 すぐにドアが開いて、詰襟制服の御門丈五が現れる。

 いつもと変わらぬ半眼で美織を見て、彼ははにかむような薄い笑みを浮かべた。

「丈五、おはよう」

「おはよう。じゃあ、行くか」

 いつもの挨拶を交わし、一緒に高校へと出発する。徒歩で十五分ほどの距離。都立日比坂高校を選んだのは通学が楽だからというのが大きな理由だった。決めたのは美織で、御門も特に成績が良くはなかったので同じ高校に行くのに違和感を持たれることもなかった。

「おっ、トンボだね。アカトンボだ」

 アカトンボが一匹、二匹。フワフワと美織に挨拶するように周囲を飛んでいる。

「夕焼ーけ小焼けえの赤とーんーぼー」

「今は朝だけどな」

 歌い始めた美織に苦笑して御門が突っ込む。

「いいのいいの。さあ、丈五もご一緒にー。負われーて見たのーはーいつのー日ーかー。十五ーでねえやーはー嫁にー行ーきー」

「今歌詞を飛ばしたぞ。多分」

 そんなことを言いながら二人は並んで歩いていく。途中、少しだけ御門も参加して歌ったりもしていた。

 二人の周囲を、数十匹のアカトンボが飛んでいた。

 上柊町のあらゆる動物と虫達が、少女を見守っていた。



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※歌詞の著作権切れは確認済みです。

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