第16話 攻略の難易度は上がるもの

 魔王が半年かけて攻略したのだから、1日て3階層へ到達したのは、上出来だろう。レイコックさんの話しでは、ここまでに魔王の配下は200名近く犠牲になったらしい。


 3〜5階層はクエスト的な物は無く、単純に雑魚モンスターを倒し、それぞれの階層守護者を倒せばいいらしいが、それぞれかなり強いらしい。


「さて、いきましょう」

それなりに道は入り組んでいるが、難しくわない。ジューロが次々と魔物を倒して行く。後からクロックがついて行き、一匹も逃さない構えだ。


さすがに、百匹は倒しただろう頃に、ビーシャ様が

「そろそろ交代するわよ!」

そう言ったが、

「大丈夫、弱すぎて準備運動くらいにしかならない!」

すると、ライコックさんが、ジューロに対して、

「これほどの剣士を初めてみました。魔王軍の四天王に匹敵するか、あるいはそれ以上かも」

「それほどでも〜」

かなり照れている。


ようやく階層守護者の扉まで来た。ミノタウロスがここの守護者らしいが、ダンジョン内の魔物は、一度死んでも、魂がダンジョン内にある限り、時間が経つと復活するらしい当然、魔王が倒してから、もう数年になるのだから、復活しているだろう。


身構えて扉を開いた………

何もいない。

「いない?」

「おかしいわ、警戒を解くことなく辺りを見回したが、やはりいない」

「アリー、これは変だわ、どうする?」

するとジューロが張り紙を見つけた。

"5階層、守護者の間へ" そう書いてあった。


「やった、ラッキー、一気に5階層だ」

「あんた馬鹿? これは5階層で、階層守護者が、3匹同じ場所で相手するって言ってるのよ!」

「ということは?」

「手強いってことよ!」


まずいことになった。3匹同時に強敵とは、


「ねえアリー、四階、五階層は、どんな奴なの?」

「え〜と、あ、共にミノタウロスだけど、3階層は普通の兵隊、四階層は戦士、五階層はキングで、キングは50匹ほどの兵に囲まれているそうよ」


「え、そんなの無理じゃん」

いつもの弱音ではなく、事実だ。人間が五階層で逃げ帰ったのも理解できる。その時の陣容は魔王軍と同じように、大きな犠牲を出しながらも、数でそこまでは行けたようだ。


たが魔王軍は攻略した。何か、弱点でも発見したのだろうか?

「アリー、何か弱点でもないかしら?」

ここは、一応深くもぐって思い出してみよう。

「開け、私の書庫、魔物の種類の棚、ミノタウロスの書」


ミノタウロスの弱点は〜、と、あった。

「脚が弱点、力が強く、体重が重い割に細いため、1本でも怪我をすると、極端に攻撃力が落ちるようです」


「わかったわ、脚狙いということで、ジューロが脚を切って動きを止めたところで、私が、がたづけましょう。」

一応の作戦は決まったが、果たしてうまくいかやら、不安な気持ちで階段を降りていった。


 ・・・・長い、2階層分降りる程度にしては、長すぎる、ようやく5階層守護者の間、入口の扉前に着いた。


 ここまで来ると、魔力探知で敵が確認できる。特に、こういった支援魔法ご得意なライコックさんが正確に把握してい言った。

「予想より多いですね。全部で300匹はいます」

これは恐らく、さらに下の階層からも来ているのだろう。


「どうするんだ、さすがにヤバくないか?」

「いえ、好都合です」

わたしは、説明した。

「ビーシャ様、使えますよね、ここなら!」

「ええ、ここまで長く降りてきたってことは、恐らく天井が高いわ」

そう、つまり極大魔法を使っても、天井を崩す心配がないということだ。一網打尽にすることごが可能なのだ。


「ジューロ、あなたは、詠唱が終わるまで、奴らを追い返せばいいのよ」

ようやく意味がわかったようだ。


 ビーシャ様が詠唱を始めた。

さて、扉を開けてみると、予想通り魔物達がずらりと並んでいる。

 少し驚いたのは、7階層の守護者、エルダーリッチがいる。そして、ここは広い、天井は30メートルはあり、魔物達との距離は50メートルもある。


エルダーリッチが号令をかけるが、ビーシャ様はもう詠唱が終わるところ、


「燃やし尽くせ、インフェルノローラー!」

床の一部が溶ける程の火力に、魔物達は焼き尽くされた。しかし、かろうじて防御魔法を使ったエルダーリッチが、ボロボロになりながらも生き残っていた。


「極大魔法を使えるとは、だが、先へは進めまい」

「どういうことだ!」

「フフ、せいぜい悩むといい、さらばだ」

そう言って、灰となっていった。


こうして、呆気なく5階層を突破し、当然、7階層のエルダーリッチも倒したため、8階層にたどり着けたが、まさかの苦戦をしいられた。守護者の間まできたのに、次の階層への扉が見当たらないのだ。 

 その日は夕方まで守護者の大広間をくまなく探索したが、わからない。取り敢えず夕食をとって寝ることにした。


翌朝、とにかくヒントとなる物を探すことにした。古代文字や、印、何か見落としていないか手分けしてさがした。しかし、見つからない。


そもそも、レイコックさんはこの様な仕掛けがあるとは言っていなかった。つまり仕掛けが変わったということだ。エルダーリッチの言っていたことは、このことだったのか!


「これは、仕掛けが変わったわね?」

「そのようですね、エルダーリッチの最後の言葉から、相当の自信があるようです」


ここから推測できるのは、扉は隠したということだ。

ならば、魔法を使って隠したのだろう、私たちは魔法の痕跡も探った。しかし見つからない。一日かけて探したがだめだ。こうなっては、この守護者大広間以外の部屋を探してみるしかない。 だが、あてもなく探すには、この7階層は広すぎる。もちろんマップを作りながら来たが、途中37もの部屋があり。それをすべて探すとたしら、どれほど時間がかかるだろう、しかし他に手段がない。


一週間がたち、ようやく7つの部屋の探索が終わったが、このままでは効率が悪すぎる。そこで、最終手段として、女神様から信託をうけられないか試してみることにした。

 「皆さん、よろしいですね」

「はい、大丈夫です」

さて、ダンジョンの中で、はたしてだきるのか不安だがやってみた。舞ってみると眩いばかりの光とともに、女神様が現れた。そしておっしゃられた。


「アリーよ、物事を逆から見てみるとよい、それと愛か死か、選択を迫られ時がくるでしょう」

 そして女神様は消えた。


「どういう意味か、さっぱりわからないんだけど」

ビーシャ様が呆れたように言ったが、私はピンと来た。もしかしたら手作業で北の隅にある守護者の部屋を南と逆にしたのでは?そして、それがバレないように、長い階段をつくって歩かせたのでは?


 だとすれば、逆側の8階層の入口付近が元守護者の間というのとになる。私の予測を聞いて皆が納得し、探索を始めた。


「アリーさん、この壁新しいです」

ライコックさんが何か見つけたようだ。

確かに古臭くカモフラージュされているが、少し磨くと新しそうな壁がでてきた。叩いてみると向こう側が空洞になっている音がした。


「ここですね、クロックさんとジューロでぶつかってみてください」

「よし、まかせろ!」

"ド〜ン"という響きとともに壁は崩れて、向こう側に扉が現れた。やはり正確だった。


「やりましたね!」

「それにしても、アリーさんの知恵には頭が下ります」

そう、ライコックさんが、褒めてくれた。

「本当だよ、アリーさんが俺達のパーティにいてくれたら、もっと楽に魔王の元まで行ってたよ」

クロックさんも合わせて言ってくれた。

するとビーシャ様が、

「ということは、やっぱり女神様がアリーを選んだことは、正しかったということね」


「それにしても、後半の愛か死かってのが、気になるわね」

 確かにそうだ、確証はないが最悪の場合を私は想定した。

「皆さん、そろそろ一度外へ戻って、食料を補充しませんか?」

 まだ食料はあるが、ここまでの魔物は全て倒したので、ここに食料を備えるベース基地にしようと提案したのだ。皆、納得してくれた。

外へ出て近隣の村へ向かったが、私には別の用がある。

 そっと独りになると、村の宿をあたった。

魔王のせいで、3つほどしか営業できていないので、すぐに見つかった。探していたのは"猫の目"トーマスだ。来ているはずだが、


いた。うん良く一軒目で見つけた。

「トーマス、久しぶり!」

「アリー様、お元気そうでなによりです」

「しかし、ここへいらっしゃったということは、なにか問題が?」

「ええ、最悪の事態があり得そうなの、私が巫女だっていう話しは広がっていない?」

「ああ、そのことですか、今、話題の中心ですね、正直言って、どの国も、喉から手が出るほどアリー様が欲しいでしょう」


私は少し思案したあと、

「やはりそうでしたか、では、この手紙をエイビス様に急いで届けてください」

「わかりました。どのくらいの優先度ですか?」

「できる限り早くです」

「わかりました」


これでよし、考えすぎならいいのだか、

私はその後、皆に合流した。

その日は宿に泊まり、久しぶりにベッドでくつろいだ。ビーシャ様と相部屋だ。


「アリー、いろいろ聞きたいことがあったの」

「はい、ビーシャ様、どんなことでしょう」

「この仕事が片付いたら、お互い王妃になるのだけど、具体的にどんな暮らしをするの?」


「私は今まで通り、メイドとして、巫女として、妻としてやっていきたいと思っています」

「そうなの? 私はアリーとお茶をしたり、子供をつくって、お互いに遊ばせたり、勉強したりして楽しく生きていきたいわ」

「それは楽しそうですね、いい考えだと思います」

そんな話しをしながら、夜は更けていった。


さて、次の日は、さっそく9階層への扉を開けた。この階層には守護者がいない、ただ一面床が凍っており、行く先から強い風が吹いている。レイコックさんの話しでは、ただ強引に進んで行ったらしい。


「前に進めない!」

先頭のクロックが、滑る床と強風に足をとられ、一歩も進めない。

「アリー、魔王軍はどうやって進んだの?」

「はい、下っ端魔族を床に寝転ばせ、道を作ったそうです」

「それじゃ100人は必要だよ、何か対策は?」

もちろん、今回のために用意してあるものがある。

「これを使ってください」

そう言って手と足にはめ、氷に引っ掛けられる道具を出した。時間がなかったので1人分しか用意できなかった。


「これで誰か1人が向こうの扉まで行って、ロープを渡すしかないでしょう」

さて誰がやるかだが、












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