第3話 目指す道は
秋、冬が過ぎ、年が明け再び桜が芽吹いた季節、僕達は二年生に進級した。
かと言っても変わったことはなく、部活もやっていない以上後輩との関わりがないため二年生になんてなった実感はほとんど無い。
強いて言うならクラス替えだろうか。
仲の良い友人とも咲宮さんとも別のクラスになってしまった。人生は世知辛い。
たまにサボってしまう時もあれど、勉強の方は変わらず僕は続けており、塾にも通うようになった。
そのかいあって、僕の学力はメキメキと伸びていっており、学年で上から数えた方が早い順位程度には学力が上がっていた。
また、あれ以来僕と咲宮さんの間にはちょっとしたゲームが出来て……
「準備はいい? 関原君」
「いいよ。今回こそ勝つから」
僕らは放課後に学校の近くにある小さな公園で顔を見合わせる。
「「せーのっ……ドン!」」
僕らは互いに5枚の紙を相手と見合わせた。
「国語、勝ち。数学、勝ち。社会、勝ち。理科、勝ち。英語、勝ち」
「…………」
「ふふん。今回も私の勝ちのようだね関原君」
「くそーっ…………」
僕達は中間、期末テスト終了時にテストの点を見せあってそれを競い合うというゲーム……いや、勝負をしていた。ちなみに全敗。
「1科目でいいから勝ちたいんだけどなぁ」
「簡単には追いつかせないって言ったでしょーっ?」
「ぐぬぬ……最近、咲宮さんの凄さがよりわかるようになってきたよ……」
「関原君も頑張ってると思うけどね。ぐんぐん私に迫ってる。うかうかしてられないなーって日に日に思うよ」
頑張ってる。
咲宮さんにそうやって認められるだけで心が踊ってしまう僕は単純だ。
「じゃあ次は期末だね。期末は9教科だからもしかしたら1つくらいは私に勝てるかもよ?」
「そう易々と勝たせる気もない癖に」
「当然。じゃあ頑張ろうね関原君」
いつものように笑顔で手を振って僕達はその場で別れていく。
負けたことに悔しさはある。でもそれ以上に咲宮さんと競い合って入れることに僕は確かな喜びを感じていた。
9科目とも敗北を喫した、期末テストが終わり夏休みに入る。
去年とは違い僕は明確な目標を持って日々を過ごしていた。
勉学に励み、時折友人と出かけて遊ぶ。
去年の僕からは想像できないものだった。
「今年の夏はどうだった?」
夏が終わり咲宮さんは、意地悪げに僕に尋ねてきた。
「今年の夏は充実してたよ」
僕は堂々とそう答えた。
再び秋と冬が過ぎていき僕達は三年生になった。
そろそろ進路を定めていかなければならない時期。
僕は進路希望調査表を前にどうするべきか唸っていた。咲宮さんに追いつきたい一心でここまで来たけど入りたい学校というものは特に無い。
その日、僕は適当な高校を記載して先生に紙を提出した。
「関原君」
「咲宮さん」
下駄箱で咲宮さんといつものように会う。
「咲宮さんのクラスって進路希望調査表書いた?」
「うん書いたよ」
「なんて書いたの?」
「S高。難関高だけどあそこなら私の行きたい大学入るのに一番良いから」
「そっか。検事になりたいんだっけ」
「そうだよ。関原君は?」
「僕はまだ決まってないんだよね……。咲宮さんみたいになりたい職がないから」
言ってから気づいた。
これじゃあ一年生の頃と何も変わってない。
「……別にまだ明確になりたい職なんてなくてもいいんじゃないかな」
「えっ」
意外な言葉だった。
咲宮さんはてっきり反対のことを言うと思ったから。
「私だって検事になりたいって言ってるけど、高校、大学で気持ちが変わらないとは限らないからね。高校に入ってから探すのも悪くないと思うよ」
「そうかな……」
「わからないけどね。関原君は好きなことないの? それを軸に考えてみるのもいいんじゃない?」
「……好きな配信者とかゲームとかはあるけど」
「そういうのじゃなくてー。……わかっていってるでしょ。ちなみに勉強は?」
「勉強は好きじゃないよ」
「えぇー! あれだけ一生懸命やってるのに?」
「咲宮さんに追いつくっていう目標があるからね」
「それだけでずっと続けれるのは凄いと思うけど……じゃあ良い高校に入ること目標にしてみるとか?」
「うーん……考えてみる」
翌日、進路についての面談が行われた。
「失礼しまーす」
「おう。まぁ座って」
「はい」
パラパラと先生は紙を捲っていく。
「関原……この進路希望は本気か? あまりにも系統がバラバラ過ぎると思うんだが……」
やっぱり言われた。流石に適当に書きすぎた。
「いや、
「すいません。適当に書きました」
「だよな。まだ志望校決めるのは難しいか?」
「やりたいことが見つからなくて……」
「中学生にそういうのを探せって言うのも酷だよな。見つからなかったら学力で見るのもいいと思うぞ。ちょっと難しいかもだが関原のレベルならS高とか狙えるんじゃないか」
「……S高?」
「おう。良い高校、良い大学に入っていれば人生安泰なんて軽々しくは言えないけど、入っていることによるステータスというのは確実に存在するからな」
「……友達が明確な目的を持ってS高を目指してるんですけど、僕もそんな理由で行ってもいいんでしょうか」
「悪いなんてことは無い。俺だって高校は自分の学力で行ける一番良いとこって理由で選んだしな」
「へぇ……」
「なんにせよS高でも、
「はい。ありがとうございました」
ガラガラと教室を出て僕は一人思う。
そんな理由でいいんだろうか。
咲宮さんのような輝かしい理由がなくても、同じところを目指していいんだろうか。
もしそれでいいのなら……僕は咲宮さんと一緒の高校に行きたい。そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます