第3話 心配された二人

 ヒロユキ君に言われた、次の日の体育の時間。グラウンドであたしはいつものように運動を楽しんだ。木陰にはミナミちゃんがいて、あたしは彼女の様子を見にいく。


「こんにちは」


 ミナミちゃんは黙っている。あたしは彼女と共通の話題が無いか探した。あるじゃん。


「ミナミちゃん。あたし昨日、ヒロユキ君に自殺するって言われたんだぁ」

「ヒロユキ? 誰それ?」

「英語の時間、形容動詞て答えてた男子」

「あー、あいつか」

「そう」

「で?」

「ミナミちゃんもヒロユキ君に何か言われたんだよね?」

「聞いてたの?」

「ううん。ミナミちゃんが怒って出ていくところを見て、何か言われたのかなって」

「ちっ」


 ミナミちゃんは舌打ちをした。やっぱりこの話題は良くなかったのかも。


「具体的に何言われたん?」

「あたし?」

「あんたしかいないでしょ?」

「あたしは大学で酷い目にあって自殺するって言われた」

「それだけ?」

「うん、それだけ」


 あたしが昨日のことを話すと、ミナミちゃんの表情は固まり、搾りだすようにあたしに言った。


「あーしはパパ活の逆恨みで殺されるって言われた」

「そうなの! 酷い、パパ活って偏見だよ」

「まあ、こんな見た目だから」

「それでも勝手に思い込んでいるヒロユキ君って失礼だよ」

「いや、実際してるし」

「えっ」


 あたしはミナミちゃんの言ったことに驚いた。まさかクラスメイトがパパ活をしてるなんて。


「何であいつ、あーしがパパ活やってるってわかったんだろ? ここら辺じゃしてないのに……」


 あたしは何も言えなくなった。木陰には季節外れの冷たい風が吹く。ミナミちゃんの髪が揺れ、その瞳は悲し気に満ち溢れていた。


「あーし、死ぬんかなぁ」

「そんなことは無い!」

「あんたも言われたんだろ? 死ぬって」

「言われたけど……夢の中の話だし」

「じゃあ、何でパパ活のことがわかったんだ?」

「それは誰かから聞いたとか……」

「はぁぁ――なぁ」


 ミナミちゃんは真剣な目であたしに言う。


「あーし、死にたくないんだけど、どうしたらいいと思う?」


 これはミナミちゃんだけでなく、あたしにも降りかかる問題かもしれない。あたしは普段使っていない頭を働かせ、考えたことを伝えた。


「夢の中の話を間に受ける必要は無いと思うけど、心配なら彼に詳しく内容を訊くしかないんじゃないかな? もしかしたら大丈夫かもしれないし」

「そうだよなぁ」


 あたしの言葉を聞いた、ミナミちゃんは空を見上げる。あたしもつられて空を見ると、そこには雲一つない透き通るような青空があった。

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