第28話:6/29/日:祈り

 毎日のように泣いている。

 昔のことを思い出して。

 私がこんなに無力なはずはない。


 ブロックも投げたし、家出もした。

 しかし親の下にある状態では、猫一頭、まともに守れなかった。

 大枚はたいて買ったインテリアも、ゲーム機も捨てられた。


 大切にしているものは、全部家族に奪われた。

 だから私は本当に大切なものは、人に見せない。

 家族にも見せない。


 ああ、このさびしさよ。

 心のままに生きられぬ、苦しみよ。

 涙さえきちんと流せない。


 いびつに育った己の醜さよ。

 なにを恨めばいいのかわからない。

 無心でのりこえてきたはずの障壁が、幻にあらわれる。


 まっすぐと向かっていっては絡めとられ、貶められた悲しみよ。

 尽きせぬ涙よ。

 人生よ。


 夢は夢のまま。

 哀しみは空へ。

 還りなさい。


 ただ心の海へとはばたいて、遠くの空へ。

 今この時を飛ぶ――

 尊ぶべきは何なのか。


 とるべき術は一つなのか。

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