紅蓮兄弟英雄譚

メガゴールド

第1話  紅蓮兄弟英雄譚

 ――魔界。魔族という種族が存在する世界。

 

 僕はその魔界にて、一つの国の王の座についている。

 魔王、フレア・マーズ。それが僕の名前だ。


 今僕は側近のゼットと共に、城下町に来ていた。

 長いこと戦争もなく、平和そのもの。活気溢れる城下町だ。


 今日僕は町の子供達を集め、昔話をしに来ていた。要は歴史のお勉強だね。


「陛下、こちらです」

「わかった」


 僕は町の大きな教会へと入る。そこにはたくさんの幼い子供達と、神父殿が迎えてくれた。


「魔王様~!」「こんにちわ~!」「本物だあ~!」


 子供達は笑顔で出迎えてくれた。純粋な瞳に僕は癒される。国の未来を担う子供達……国の宝そのものだね。


「魔王様、わざわざお越しくださりありがとうございます」

「いえいえこちらとしても、昔を振り返りたい、そんな気分でしたし」


 僕は神父さんと握手をした。


「魔王様~? 今日はどんなお話をしてくれるの?」

「おれは盛り上がる、戦いのお話がいいなあ」

「あたしは恋愛物語~」


 子供達は僕にひっついてそれぞれ話しかけてくれる。


「ガキ共! 魔王様へなんたる無礼!」


 ゼットが子供達を引き剥がそうとするが、僕は止める。


 子供にはのびのびと、自然体でいてほしい。ゼットが威圧したりして、萎縮してしまったら困るからね。


「今日は……少し難しいというか、あまり楽しいお話ではないんだ。ごめんね?」

「楽しくないの?」

「うん。歴史の話だからね。少し血生臭いし……」

「血生臭い?」


 よくわかってない子供達は首をかしげる。こんな純粋な子達にそんな話するのは少し気が引けるが……

 歴史の授業として必要な事だからね。


「僕が魔王になるきっかけとも言える昔のお話。君たちが生まれるずっと前の事なんだ」

「魔王に!?」


 キラキラと目を光らせる子供達。そんな興味津々なのは嬉しいけど、期待に答えられるようなお話にはならないと思う……


「それは僕がね、十代前半くらいの頃……だったかな。その頃は戦乱の世でね……各地で戦争が頻発してたんだ」

「戦争?」


 戦争にピンと来てない。とても幸せな事だよね。この子達には戦争が無縁であってほしいものだ。


「この物語の主役は、僕というより兄なんだ」

「兄?」

「うん。歴史の話では僕達兄弟をこう称えてるんだ。……紅蓮兄弟英雄譚。恥ずかしいけどね」


 照れくさく、僕は鼻をかく。


 英雄譚という言葉に惹き付けられる子供達。


「じゃあ始めるよ。今から何十年も前のお話……まず僕の兄、グレン・マーズ……いや、」


星川ほしかわ火土かつちとの出会いから」


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