三夕VS雪
2月に入り最初の週末、お昼ごはんを食べ終えた私はベッドで瑠琉ちゃんとお昼寝をしていた。
瑠琉ちゃんが七子ちゃんのいつもの定位置である壁側に仰向けで寝ていて、その隣で可愛い寝顔を眺めるという幸せ時間。
ゆっくりと瞼が閉じていき、眠る寸前まできた瞬間、三夕ちゃんと思われる声が聞こえてくる。目を開きソファの方を向いて、そこで起きていた光景をじっと観察することにした。
ソファにいる三夕ちゃんがうんと手を伸ばしていて、その先には沙李奈ちゃんの手を無理やり引いて連れ去る雪ちゃんがいた。
「雪、沙李奈を連れて行かないでよ!」
「いつも三夕が独占してるんだから、たまには私に沙李奈を譲れって」
無言ながら強引に手を引かれる沙李奈ちゃんが可哀そう。
だけど奪い合いなんて尊すぎるから、止めはしない。
クローゼットを開けた雪ちゃんは、その中に沙李奈ちゃんを押し込んでから自分も入る。
扉を閉じると、少ししてからいつものようにジタバタと音が聞こえ、僅かながら声も聞こえてくる。
「雪さん、やめて!」
「1週間も我慢したんだから許してよ~」
「やだ!」
開けたい。
今すぐそこの扉を開けて沙李奈ちゃんの姿を目に焼き付けたい。
その願いが叶ったのか、突然扉が開いた。
私は見やすいようにそっと起き上がり、中を覗き込んだ。
雪ちゃんの手にはキャミソールがあり、沙李奈ちゃんは上を脱がされ前を両手で隠している。
開いたことに気付いた雪ちゃんがすかさず閉めようとすると、中にあったダッフルコートがふわりと動く。
そしてソファへと向かって行き、それを捕まえようとクローゼットを出た沙李奈ちゃんも、一緒にソファへ移動していった。
「おい三夕、これからお楽しみだったのに邪魔すんなって!」
「沙李奈に酷いことするの、いい加減やめて」
三夕ちゃんはもう奪われまいと、ダッフルコートを着た沙李奈ちゃんをいつも以上に強く抱き寄せる。
「あーあ。ま、いいけど。私には沙李奈の下着があるし」
この変態幽霊ちゃんには羞恥心というものが無いのだろうか。
なんて私が言えたことでもないけれど。
クローゼットを出た雪ちゃんは、ラグの上に大の字で寝転がり、いつもみたいに顔にキャミソールを乗せ、深呼吸していた。
……今日も平和だなぁ。
私はまたベッドに寝転がり瑠琉ちゃんの方を向いて、軽く抱きつき密着しながら、そのまま目を瞑った。
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