第9話 Free

「あのさ…サチさん」

 耳元に顔を近づけて、囁く。

「……なに?」

「今回はさ、いつもみたいに声出しちゃダメだよ」

「なんで?」

「体も、動かしちゃダメ」

「……むりだよそんなの」

 長い髪をまとめて、首元にキスをする。

「もっと……早いのがいい」

「これから良くなるよ。ずっと、サチさんとやってたいんだ」

「……ならいいよ」

 腰をゆっくりと振っていると、段々と彼女の身体が落ち着かなくなってくる。

「うっ……」

 机に付いた手をちょっと持ち上げては、また降ろす。自分で自分の股を触ろうとしてる。

「……自分で触るのもダメだよね」

「うん」

 足をもじもじさせて、腰が時折変にふるえる。

「なんか……ずっといけそうでいけない感じ……はがゆい」

 段々、ホントに耐えきれなくなって来たみたいだ。

 机に上体をもたれて、尻を震わす。

 僕の方はもう少し早く動いたらイきそうだった。

「んぁ……もっと…激しくして……」

「だめ」

 既にすごい量の体液が流れ出ていた。

 僕はペニスを引き抜いた。

「嘘でしょ? あそこまで焦らしといて?」

 がっくりした様子で、僕を見上げてる。

「僕だって、もういきたい」

「じゃあ、なんでよ。お互い疲れただけじゃん」

「今度またね」

「……こんな中途半端な終わりじゃ、またやろうって思わないよ」

「今度会うまで、オナニーもしちゃダメ」

「……私、人に指図されるの嫌いなんだよね」

「じゃあ、今すぐ自分ですればいい」

「……くそ野郎」

「僕も今すぐしたいけど、我慢する」

「……」

 ジトっと睨まれる。

 ……。

 …。

 まだ彼女の全裸も見てないな。

「ごめん、やっぱなし。もう一回やろう」

「でしょ? 焦らしプレイとか、マジ苦痛なだけだからね? 欲望何て、抑えてもなんも偉いことない!」

 そういってセーラー服を脱ぎ捨てる。おっぱいが胸元でシュールに垂れてる。

「でも、悪くなかったでしょ?」

「まあ……悪くはなかった」

 拗ねたようにそっぽを向く。

「あなたは特別」

 そう言ってまたキスされる。

 彼女にとってはちょっとしたキスだったけど、僕は彼女の身体を離さない。

 机に押し倒して、思い切り舌を割り込ませる。

「あっ…そう! やっぱこうじゃなくちゃ!」

 嬉しそうに脚を腰に絡ませて、ブラついた僕のペニスを包み込む。

 これが、僕と彼女が友達になった日。

 でも彼女にとって恋人は、ここにはいない伊神さん。

 僕にとって伊神さんは──

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