ザ・フリーランス☆ダイアリー

鐘井音太浪

第0話 まずは語りべから……


 俺は向かっている……この頃やり始めたケイベン仕事。フリーランスライフがお似合いの俺は……一人身で、ケイタイ(スマホ)電話で仕事を請け負う便利屋人生を只今遂行中だ。五十万円で中古の軽バン(軽自動車のワゴン車)を手に入れて……税務署と法務局にフリーランス便利屋『歩里井屋』の屋号で……流れ着たこの町で。借金は無いが持ち金も二百万円チョッキりで車を買った分所持金百五十万円。あばら家平屋の訳あり物件を粘り交渉百二十万円税込みで購入し住み始めた。車を止める分の敷地を有する家の間取りはスマートな言い方なら1ⅬDKで、部屋と呼べるところは押し入れあり四畳半と猫の額ほどより狭い庭を臨む縁側付き。トイレはあるが浴室は無い。今時井戸なので水道代は只だ。

 町民センターに移転届けも出したここ事務所兼自宅で……税務署の指示通りに青色申告申請で便利屋を開業したが……全く無知な簿記は難読書の如しで、家計簿程度なら理解できるし……経費も何となく理解できる。が、掛け売りだの貸借対照表だのと……入ってくると頭が混乱するので、仕事に支障をきたすと俺は踏んで、即、廃業届を出して……白色に変えた。白色なら家計簿程度の簿記と収支内訳書で、時期の年末調整をこなせば何とかなるし。ずうっと時間を使える。難題を悩まなくともいいことが、気が楽になり何よりだ。

 インボイスとやらも目下勉強しようとはしているが、便利屋稼業の慣れが来て、フリーランスに時間の余裕が来れば手をつけようとは考えてはいる。そのうち巷的に必須になれば知識を入れておかないと、苦労する。日々労働稼業では、今の俺には徹夜続きで猛勉強はフリーランス稼業に響くのは必至だ。時間に追われ過ぎては、何のために生きているのかすら……束の間でも楽しむひと時を求めて何が悪い。ま、年間二千万越え収入は必要ないし。たまの贅沢がご褒美事を堪能できる稼ぎができれば俺はそれでいい。

 四色ボールペンは愛用のがある。残り所持金三十万円から百均ショップでノートを二冊分の二百円税別の事務費のと商店街の印刷屋に頼んだチラシと各種経理用紙を買って……只今、その残り金と案件七回分の稼ぎ金が全財産な五十代半ばのそんな俺は、今、とあるお屋敷の、声の感じから推測するに……年配女子の仕事依頼に向かっている。

 一件につき一万円で、現金請求の税込み価格。所要時間一分仕事だろうが二十四時間だろうが、契約を交わせば請け負う俺の覚悟だ。例えば他者が八時間かかる仕事を、俺の能力で四時間でおわしてもそいつが一件分の契約仕事と、ポスティングしたチラシにも……本契約の詳細にもデカ字で謳っている。あとからその日の追加仕事は御法度で、契約案件を終えたら時間は関係なくお暇する。一日一件で、依頼があって、内容が気に入れば仕事をするが。言葉遣いでなくその内容重視の俺は、いけ好かない客はご遠慮いただいている。

 兎に角俺は……顔なじみになったご近所の家々やアパートの……草むしりやら屋根のペンキ塗りに庭木の手入れなどなどと一週間こなし、ご近所等評判をものにしてもいて、その、今、向かっている屋敷の主の耳にも届いたのかは知る由もないが。

「あなた、ケイベンさん? ひと仕事お願いしたいですの……」てきな電話依頼で……。

 資格のいる仕事はしない。が、無資格でも勤め人には面倒くさい仕事は潜んでいるもので、需要はある。が、この町の様子は……最終的にどこか優しく、陳腐性も……?



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