第39話「優勝の喜びとご褒美のキス」
#第39話「優勝の喜びとご褒美のキス」
今日はルカの剣術大会の日だ。
そして明日は、私の魔術大会。
…そう思うと、朝からずっと緊張で胸がそわそわしていた。ここまできて、あっさり負けたらどうしよう。
「ルカ、大丈夫? 緊張してない?」
そう聞いても、彼はいつも通りの笑顔で「うん、全然」と答える。
すごい。私だったら、こんな大きな大会で緊張しないなんて無理だ。
そして……ルカは本当にすごかった。
確かにルカの剣の上達は早く強いと思っていた。
でも剣術大会5~8歳の部に5歳という最年少での出場、勝てなくても仕方がない。
でも予選を全勝で通って凄いなと思っていたら……
なんとそのまま無敗で優勝したのだ。
出場選手の中で最年少5歳での快挙。
私は驚いた。そして嬉しくて、思わず戻ってきたルカに抱きついてしまった。
「すごいよ、ルカ!本当にすごいっ!」
なのに、ルカは「全部リリア姉のおかげだよ、模擬戦に付き合ってくれたからスピード勝負には慣れてたからね。ありがとう」なんて言ってくれる。
当たり前の話だけど凄いのはルカだよ。私じゃない。
…それでも私のことを気遣ってくれて嬉しい。もう、好きが溢れて止まらなかった。
でも、次は私の番だ。
明日、魔術大会に出場する。
…でもどうしよう。不安だ。不安で仕方がない。みんな強そうだ。
「そうだ、今日も絶対にルカと一緒に寝よう。心を落ち着けるにはそうするしかない」
私はそう決めてルカにお願いした。ルカは私の不安な気持ちを察してくれたようですぐに了承してくれた。本当にできたやさしい弟だ。
そして、私は夜、布団の中でルカに話しかけた。
「ねえ、前にも言っていたことだけど、もし私が優勝したら、ご褒美ちょうだい」
ルカは少し照れたように笑って、「うん。僕にできることなら、何でもするよ」って。
…その言葉だけで、私は少し落ち着きそのまま眠りにつくことができた。
そして、大会当日。
…強そうな人がたくさんいた。けれど、私はおびえても仕方がない。
私はヴェルド領の代表。負けてもそれは仕方がない。堂々とした姿で戦わないと!
けれど――
あれ?なんだか、相手が弱い。
拍子抜けするほどだった。
予選は苦戦することなく楽に通過できた。
そして決勝トーナメントに進出しても歯ごたえのある相手はいなかった。
準決勝も楽に勝てて、決勝も少し苦戦した程度で気がつけばそのまま優勝していた。
これならルカの魔法の方が強いのではと思うぐらいだ。
「勝者、リリア・ヴェルド!」
「……勝った。これで優勝だ」
そう呟いたとき、自分が強くなっていたことを改めて実感した。
そして私を讃える大歓声が聞こえてきた。
「さすがリリア様」
「魔法使いのエースの優勝だ!」
周りに手を振ってこたえた。
嬉しいな。シルヴィにはまだ勝てないけど……それ以外の人にはきっと負けない。
私は優勝の報告を家族にした。みんなが喜んでくれた。
…ああ、よかった。本当によかった。みんなの期待にも応えることができた。
その夜、私は再びルカと布団に入る。
そして私は言った。
「ルカ、ご褒美ちょうだいね」
「うん、昨日も言っていたからもちろん覚えているよ。何?約束だし守るよ!俺にできることなら何でも言ってよ」
「なら遠慮なく、ご褒美、もらうね」
少しだけいたずらっぽく笑って、私はルカのほっぺにキスをした。
ルカは一瞬ぽかんとした。
「わ、リリア姉!?」
「うふふ、びっくりした? じゃあ、今度はルカの番だよ」
「え?どういうこと?」
「私のほっぺにもキスして。優勝したんだもん、それくらいのご褒美はいいでしょ?約束だし」
ルカは少し混乱して迷ったようだけど約束したことを思い出したようで行動に出てくれた。
「……うん、約束だもんね。そうだよね」
そっと私のほっぺにキスを返してくれたんだ。
「ん……ありがとう、ルカ」
…ああ、もう。嬉しい。
胸がいっぱいで、涙が出そうだった。
私を支えてくれるのは、いつだってルカだ。
どんな時も、そばにいてくれてありがとう。
でもルカは私の魔法のライバルでもある。ルカには感謝しているけど魔法だけは負けたくない。ルカと一緒に歩んでいこう。
私は、そんな感謝と決意の想いを胸にそのまま眠りについた。
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