第19話「兄弟の帰還と新たな挑戦」
#第19話「兄弟の帰還と新たな挑戦」
1歳年上の兄のマルクと1歳年下の弟のテオがヴェルド領に帰ってきた。
我が領は貧乏だったのでガイル兄と私以外は研修や勉学という名の出稼ぎに出ていたのだ。
幼い頃に家を離れていった二人の悲しそうな顔。そして隠れて「ごめんね」と言いながら泣いていた父さん、母さんのことを思うと感慨深い。
下手をすればもう会えないと思っていた兄弟が今また私たち家族のもとへ戻ってきたのだ。本当に凄いことだと思う。
そして……きっとこれも、ルカのおかげだ。
ルカが騎士団を改革し、魔物討伐が順調になった。それによって食料が安定供給されるようになった。更には平民の仕事も増えたことでみんなの生活が潤っている。ヴェルド領全体が日に日に良くなっていることが肌感覚でも分かる。
その結果としてマルク兄とテオも安心して帰郷できるようになったのだろう。父さんと母さんによると他の兄弟も順次返ってくるらしい。
家族が一人、また一人と集まり始めていることがどこか心を温かくさせた。
「ただいま、リリア姉さん」
そう言って笑ったテオの顔は、記憶の中のあどけなさとは違い、どこか頼もしさを感じさせるものだった。
マルク兄も以前よりもたくましく、落ち着いた雰囲気をまとっていた。
その後、ルカは帰ってきた二人と共に農産物作りの基盤整備に動き出したようだ。本当に多彩な弟、でもさすがに農産物作りは専門外だと思うのだが……
最近はルカが農産物作りに時間を割いているために書斎にいる時間が減った。少し寂しい。
もちろん朝と夕方には変わらず一緒に走っているし、模擬戦も付き合ってくれるので会えないわけではないけれどね。
その後しばらく経った後、夕食時にマルク兄とテオの話を聞いて家族みんなでびっくりした。
「ルカは本当に天才だ。うちの領でも農産物が育つようになったよ!」
マルク兄とテオの話に耳を疑ったのは私だけではないだろう。現実に父さんも母さんもびっくりしている。
二人によると、ルカの肥料とやらの提案によって、ヴェルド領の畑でも野菜が実るようになってきているという。
この領は土地が痩せていて農産物を育てるなんて考えられなかったことだ。それを3歳の弟がやってのけているというのだから、本当に驚かされる。ルカはどこまで才能があるのか?
私はとてもではないがルカの知識と発想、そして行動力には到底かなわない。
でも、だからといって、私は立ち止まるわけにはいかない。
「私も、もっと頑張らないと」そう心の中で呟いた。
せめて魔法に関してはだけはルカに負けたくない。
私は書斎で魔法書を手にとって決意を新たにした。
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