第20話 令嬢は、堕ちたクラスメイトと戦う
「我が名は、【セルケト】! 魔王【サイラス】様の忠実なるしもべ! 魔王様に歯向かう愚かな銀の女騎士! このセルケトの刃にて、首を打たれるがよい!」
サソリの尾のようなムチを、リカルダが振り回す。
「まずは、自分の作ったヨロイでどこまでやれるか」
最近は毎回、【トクサツスーツ】に頼ってばかりだ。が、自分でもスーツの開発は進めている。
あくまでも、自分の力でスーツを作ること。それが私の目標である。
自作の銀色のスーツにて、勝負をすることに。
ここで負けるようなら、相手のほうが強いってことだ。
ルクレツィア・アルジェントと、リカルダ・D・ストルキオ。どちらが上か。
ヘビのようにのたうつ割に、リカルダのムチは私を正確に狙ってくる。
キリモミジャンプなどを駆使して、回避した。
「銀装の令嬢! かつてお前のような、自作のヨロイを作る女を相手にしたことがある。貴様は、それに並び立つ腕前だ!」
御本人だけどな。
「しかし、勝つのはワタクシだ! かおおおおお!」
ムチが、地面を突き破る。
そうだ。コイツは、土魔法使いだったな。
魔王城の床が、刃のように突き立つ。
「シールド!」
盾を展開して、刃を受け止めた。
あのときより、遥かに精度は増している。攻撃力も。
けど、私にだって何年もの月日があった。ケンカの数なら、負けていない。
「ほっ、はっ、やあっ!」
次々と突き出る刃の柱を、私は石段飛びの容量で踏みしめる。
「くらえ!」
リカルダの顔面に、回し蹴りを浴びせた。
「なるほど。確かに強い。だが、コレならどうだ!」
自分の身体を、リカルダはムチでぐるぐる巻きに。
キラービークイーンとツチグモを融合させたときと、同じ現象である。
自分にも、できるのか。
「これが、本気になったワタクシだ!」
リカルダが、怪人態に変身した。人間型のサソリを連想させる、禍々しいデザインである。あっちのほうが、全身ヨロイっぽい感じ。顔も全て覆って、スキがない。
たしか【モネッド】の構成員は、寿命が減るんだよな。そこまでの覚悟をして、私に挑むか。
ならば、私もそれに応える。
「【溶着】!」
ワイバーンの素材を確かめてから、変身したかったが。できれば。
「むん!」
また、土魔法で床を刃状に変えた。
「【シールド・ジェット】!」
私は手からシールドを呼び出し、足に装着。サーフボードように剣の上を滑っていく。
「【ビリビリ】モード発動!」
私の全身にある魔力誘導ラインに、黄色い光が走った。雷属性の魔力が、スーツに行き渡る。
「くらえ、【ビリビリ・アロー】!」
高速移動をしながら、弓で何度もセルケトを撃ち抜いた。
「まだまだ!」
突き出た剣を避雷針にして、飛んでいく雷がさらに増えていく。
相手の攻撃を、逆に武器にした。
しかし、セルケトの表皮を突き破るには至らない。
「ええーっ。全方位攻撃だぞ」
並の魔物なら、これでも十分倒せるのに。
「ワタクシを、他のモンスターと同等と思うな」
たしかに。相手は、大幹部クラスの魔物だ。
「あんたほど強い相手が、どうして魔王なんかに?」
魔王も大概強いが、モネッドと魔王は直接関係はないはず。
「モネッドは、魔王【サイラス】様とは協力関係にある。魔王様からオリハルキウムを供給してもらい、我々は活動の手を伸ばすのだ」
モネッドのボスは、魔王と手を組んでいるわけか。
「そこが、わからん。モネッドみたいな非人道的組織なら、魔王に『様』なんてつけないよね?」
単なる道具のように、切り捨てるはず。
しかし、リカルダは絶対の忠誠を誓っている。
となれば、答えは一つでしょ。
「お前さあ……リカルダ・D・ストルキオじゃないね?」
私が指摘をすると、セルケトはにやりと笑ったように見えた。
「では、誰だと思っているのだ?」
「ドマ将軍」
「正解だ!」
打点の高い回し蹴りで、セルケトはシールドに乗った私を撃ち落とす。
「リカルダ・D・ストルキオなんぞ、もうこの世にはおらぬ! ワタクシは、リカルダの記憶を持った、魔王サイラス様の忠実なるしもべなり! いずれモネッドも、我が支配下に!」
なるほど。魔王側が、モネッドを利用しようとしてるわけか。
「モネッドって組織は、信用ならない?」
「当然だ。あんな弱小組織ごときに、無限の力を持つ魔王様が負けるものか。我々は手を組むフリをして、相手の技術力を奪っているに過ぎん」
「ああ、うん。よくわかった」
ナメ腐ってるなぁ。あっさり、足元をすくわれそう。
「侮らないほうが、いいんじゃないの?」
「あんな小物どもになにができる? 復活した魔王様の、敵ではない!」
土魔法と闇魔法が合わさって、城全体がゴーレムと化した。
だったら、こっちも。
「いけ、【銀装魔人】、レッツゴー!」
私は、戦闘用の大型ロボットを喚び出す。
ドマ将軍が闇魔法で作り上げたゴーレムを、一撃で粉砕した。
「なっ!? 闇の魔素【オリハルキウム】をふんだんに取り込んだ、我がゴーレムが!?」
「中途半端に魔素を取り入れた魔法なんて、時代遅れだっての。今はもう、お前たち魔族の時代じゃない」
やはりそうだ。コイツは、魔素を力任せに振るっているだけ。絶妙なコントロールに、乏しい。
「おのれ!」
「お前に比べたら、リカルダのほうがまだ強いだろうね」
「知った口を!」
赤黒い閃光を、セルケトは尻尾から撃ち出す。
私は、シールドで受け止め続けた。
「やるではないか。魔族の将軍たるワタクシを、ここまで追い詰めるとは! かつてワタクシを取り込もうとした少女も、掃討な腕前だったが、ワタクシの敵ではなかった」
「リカルダに、何をした?」
「奴は学生の身ながら、モネッドの手先だったらしいな。抵抗していたが、最期はあっけなく身体を差し出しおったわ!」
ゲラゲラと、ドマ将軍が笑う。
「たとえ虚勢を張っていようと、所詮は人間! 魔族の偉大なる力には敵わず!」
リカルダに、特別な感情はない。友だちですらなかった。
しかし、こんなヤツに身体を奪われてしまって、私は同情する。
コイツは、ドマ将軍は、絶対に許さない。
リカルダの無念は、私が晴らす。
「これが無限のオリハルキウムの力だ! オリハルキウムの影響で、魔族は魔界では四倍のパワーで戦うことができる」
「……四倍で、この程度かよ!」
私は、相手の閃光を跳ね返す。
「ぬお!? ワタクシの攻撃を、押し返すとは」
「……無力な少女を穢したお前は、許さん」
相手がリカルダじゃないってわかったら、もう容赦はしない。
リカルダではないなら、私が身バレしても問題ないし。
もしコイツがリカルダなら、こんなところで逆上はしない。冷静に判断して、突破口を開く。
リカルダは攻撃的だったが、あくまでもフェアプレーを重んじるやつだった。
そんなクラスメイトを、コイツは侮辱したんだ。
「お前は、生かして帰さん」
「生きて帰れぬのは、貴様の――」
「ダイレクト、【ビリビリ・ミジンギリ】!」
相手が攻撃をするより先に、私はビリビリモードの槍でセルケトを粉々になるまで切り捨てた。
「やっぱりね。ミスリリウムに満たされた力なら、オリハルキウムで守られている魔族だって目じゃないってわかった」
だったら、魔王にだって傷をつけられるだろう。私のトクサツスーツでも。
「……なぜだ? 偉大なる魔族が、どうして人間なんぞに?」
まだ、わからねえのか?
「人間をナメていたからさ」
ドマ将軍が、大爆発を起こす。
「よし、魔族の魔石ゲット」
それにしても、どうしてアガタのような聖女は、魔王に攻撃ができるのだろう。
ミスリリウムと、関係があるのか?
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