第15話 ヒーローは、間に合わなきゃ意味がねぇんだよ

スフィアの空が赤く染まっていた。

魔力の余波で空間が歪み、人工の空が軋む。


「あと少し……!」


カナタの《護咆》が限界に近づいていた。

強化したとはいえ、相手は帝国直属の暗殺部隊。

防ぎきれる保証は、なかった。


「下がれ、カナタ! ここは俺が!」


リオの声が響く。

かつて“規格外”と呼ばれた魔力が、再び解放される。


「俺は、ずっと後悔してた。

力を持ってるくせに、誰一人守れなかったことを。

仲間が、笑って死んでいったあの日を」


リオの掌に、炎と風が混じる。


「でも今は――」


そこへ、仮面の敵が突っ込んでくる。


「……“今度こそ”って、思わせるなよ」


敵の一撃が、リオを貫こうとする刹那。


「バカ野郎!!」


カナタが間に入った。


《護咆》が悲鳴のような光を放ち、攻撃を食い止める。


「お前、さっき言ったよな。“守れなかった”って。

だったら今守れ! 今ここで、俺たちを!」


カナタの目は燃えていた。


「ヒーローはよ、間に合わなきゃ意味がねぇんだよ!!」


リオが目を見開いた。


「……カナタ、お前……」


「ここは、俺たちの街だ。もう誰にも、壊させねぇ!」


その瞬間、リオが拳を握りしめた。


「……ああ、そうだな。もう逃げねぇ」


リオの魔力が再び解放される。

だがそれは、暴走ではなかった。


意志と覚悟をもって制御された、“本物”の力。


「――《全領域転換・幻界爆心》!!」


巨大な魔法陣が地面から浮かび上がる。

空が一瞬で青くなり、敵の気配がすべてかき消えた。


帝国兵は全滅。

スフィアの街は、守られた。


「……ふぅ。派手にやっちゃったな」


リオがへたり込み、カナタが笑った。


「ヒーローってのはな、そういうもんだ」


その背中を、街の人々が見つめていた。


誰もが――

その姿を、“希望”と呼んだ。

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