第3話 畑の守りと気持ち悪い父
(気付けば赤子とは……あの婆さんは、結局何だったのだろうか)
「気にする必要は……無いな」
そう言いながら、ニノアに抱っこされたままの姿で、畑へと到着した。
その畑。畑と呼ぶにしては、あまりにも酷い。
土は水分を含まず、雑草も生えない程に弱り、所々に、黒ずんだ何かが蠢いている。
『死の大地』──── 遥か昔、栄華を誇る都市国家が在ったとされる、不毛の大地。
自らが生み出した兵器が、突如暴走。たった一夜で、都市が滅びましたとさ。
その所為で、見渡す限り砂漠しか無く、力を持たぬ者同士が、支え合って暮らしている。
そんな死の大地にも、生命は存在する。
巨大サソリや、巨大トカゲ。
大人サイズのトカゲなぞ、恐竜と言っても、間違いでは無いだろう。
その二体は、まだ良い。
捕まえれば、美味しい食材である。
この死の大地で、最も危険で、最も避けなければならないモノは何か。
それは、『黒く
ニノアに下ろしてとせがみ、ミノアはよちよちと、その黒ずんだ
幼女の可愛いパンチなど、その『黒く
それが、普通の幼女であったなら、ではあるが。
ミノアの可愛いパンチが、黒く
しかも、『モゲェェェ』と、断末魔の様な、気持ち悪い音を発しての、消滅である。
(良し。これを繰り返していけば、ゆっくりではあるが、畑が良くなるだろう)
「ニノア母よ、手入れをしても大丈夫だ」
ニノアが初めて、その光景を目にしたのは、ミノアが生後二ヶ月程の時。
ミノアの姿が見えず、家の中を探しても見つからず、急いで外へと出た時、その光景を見た。
ニノアの背丈程の『巨大な黒く
可愛いパンチ……最早兵器である。
「有難う、ミノア」
感覚が、麻痺しているのであろう。
ニノアは、その光景を笑顔で見た後に、ゆっくりと畑へ入り、土を弄り始めた。
(ふむ、他には……あそこか)
ミノアは、ニノアに被害が出ない様、よちよちと歩きながら、『黒く
ミノアと言う存在は、『黒く
「ふむ……こんなものか」
「ミノア。そろそろ、お家に入りましょうね──っ」
そう言いながら、ニノアはまた、ミノアを抱っこしてから頭を撫でるが、ミノアの顔が、若干引きつっている。
(ニノア母よ……抱き付くのなら、泥を落としてからに、して欲しかった……)
◇ ◇ ◇
年月は流れ、ミノアは二歳となった。
その容姿は、あの美女を小さくしたかの様な、人外の美を纏い、両親の面影は、髪と目の色ぐらいである。
「ミ──ノアっ。パパでちゅよ──っ」
(さっきから……何なのだこの男……)
「こらっ、ゼス。ミノアが嫌がってるじゃないの。諦めなさいよ」
(ニノア母よ……これが父なのか?)
ミノアが、ゼスと呼ばれた父に会うのは、コレが初めてであり、ゼスは今迄、王都へ出稼ぎに行っていた為、父と言われても、実感が持てないでいるミノアである。
実際には、産まれた時に、ミノアやニノアの側には居たのだか、影が薄いので、まったく覚えていない、ミノアであった。
「ほ──ら、パパと言ってごら──んっ」
(顔が崩壊しているでは無いか)
こんな感じで、パパと言って欲しいゼスと、なるべくこの気持ち悪い人とは、話したく無いミノアの、密かな戦いが、延々と続いていた。
「ううんっ、パパって言ってよ──っ」
(今度は体をくねくねと……ニノア母は一体、この変態の、どこが好きなのか……疑問だ)
「いい加減にしなさいゼス!」
(流石ニノア母だ。あの変態に一喝とは……)
「ミノアも、パパって言ってあげなさい!」
(くっ、両成敗とはっ……ニノア母には、勝てぬな。仕方あるまい……)
「……ゼス父で……良いか」
その言葉を聞いたゼスは、くねくねしている体をピタリっ、と止め、涙を流しながら、ゆっくりとミノアに近付き、逃げようとしたミノアを捕まえて、抱きしめた。
(ぐぇっ──っ、コレは強いっ。しかもっ、物凄く気持ち悪い……)
「ミノア──っ、そうだよっ! 俺がゼス父だよおおお──んっ!!」
抱き付いた際に、若干、骨が軋みをあげる音が響いたが、もし、普通の幼女に、今のゼスの力で抱き付いていたら、上半身と下半身が、『さようなら──』をしていたであろう。
(これはっ……キツいぞゼス父よっ……)
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