第2話 不協和音の残響 その2

美羽は、楽譜に書かれた「D」の血文字が、ただのイニシャルではないという健太の言葉を思い出していた。

健太は、音楽の専門知識を活かし、楽譜に隠された意味を解読しようと試みていた。

彼は、速水教師が残したアリアの楽譜を何度も読み込み、ある違和感に気づいた。

それは、楽譜の一部に、通常の楽譜には記載されないような、ごく小さな記号が書き加えられていることだった。

その記号は、まるで誰かに向けられたメッセージのように見えた。


その頃、五十嵐刑事は、学園の清掃員である佐藤恵から聞き取りを行っていた。

佐藤は、事件当日の音楽室の清掃記録を提示した。

記録によると、音楽室は事件発生の数時間前に清掃されており、その時点では特に異常はなかったという。

しかし、佐藤は、清掃中に音楽室のピアノの下に、見慣れない「録音機のようなもの」が落ちていたのを見つけたが、学園の備品だと思ってそのままにしていた、と証言した。

五十嵐刑事は、この情報に注目した。


美羽は、佐藤清掃員が言っていた「録音機のようなもの」と、健太が指摘した「楽譜に隠された記号」、そして「マエストロ」からのメッセージ「彼の旋律には、裏がある」が、互いに繋がっているような気がした。

もし、速水教師が殺される直前、何らかの音を残していたとしたら、それが事件解決の鍵となるかもしれない。

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