第1話 慟哭のアリア その3

ピアノ科のエリート生徒、神崎響は、速水教師の厳しすぎる指導に反発し、度々衝突していたことが知られていた。

響は事件後も、速水教師への反感を隠そうとしない。

「あの人のせいで、どれだけ多くの生徒が傷ついたか…」と、響は周囲に漏らしていた。


同僚の若手音楽教師、野口真一は、速水教師に一方的にライバル視され、陰湿な嫌がらせを受けていた。

野口教師は事件後、精神的に不安定な状態に陥っており、五十嵐刑事も彼への聞き込みに苦慮していた。


美術教師の高野美咲は、学園内で速水教師との不倫の噂が囁かれていた。

彼女は事件後も冷静を装っていたが、時折見せる動揺した表情が、美羽の目には不自然に映った。


五十嵐刑事は、学園の用務員である小島隆から、音楽室の鍵の管理記録を確認した。

事件当日、鍵が貸し出された形跡はなく、音楽室は授業外の時間には常に施錠されているはずだった。

これは、密室の謎をさらに深めるものだった。


その夜、美羽のスマホに、匿名のメッセージが届いた。

それは、速水教師の事件に関する断片的なヒントを提示するもので、美羽の推理を試すかのような内容だった。

「彼の旋律には、裏がある。」美羽は、このメッセージの送り主を**「マエストロ」**と名付けた。これは、事件の謎を解くための、新たな挑戦状なのだろうか?

美羽の好奇心は、もはや止まらなかった。

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