亡霊の妹

月夜。

Prologue

夜の街に、ネオンが静かに滲んでいた。


派手すぎる光と

どこか滲んだ哀しさが混ざるこの街は

誰にでも微笑みをくれる代わりに

決してすべてを許してはくれない。


 


──キャバクラ『アクア』。


 


そこは昼の喧騒とは無縁の

優しくも冷たい夜の社交場。

黒服たちの手際よい接客

シャンデリアのきらめき、

そして、柔らかな音楽が空間を満たしている。


 


その中で、

ひときわ目を引く新人ホステスがいた。


 


「凛さん、こちらの席お願いできますか?」


 


「はい──」


 


柔らかな微笑みを浮かべた彼女は、

静かに席へと歩み寄った。



源氏名は凛。

本名──早乙女莉緒。


 


──そう、この物語の主人公である。


 


だが、その夜。

莉緒の前に現れた一人の客が、

静かに彼女の運命を狂わせていくことになる。


 


「初めまして──橘です。」


 


静かな声。柔らかな口調。

だが、その奥底にある冷静な目だけは、

莉緒の本能にわずかな違和感を覚えさせた。


 


(なんとなく──普通の客とは違う気がする)


 


彼女はまだ知らない。

この出会いがやがて、

亡霊と呼ばれる巨大な組織との戦いに繋がり、

命を賭ける心理戦の渦中へ

引きずり込まれていくことになることを──

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