恋愛に協力的な幽霊が出る学園で水島栞奈は一筋の愛を貫く

片山大雅byまちゃかり

童貞

「雅哉……この、童貞!」


「栞奈(かんな)? いきなりどうしたんすか?」


 栞奈が泣きじゃくりながらこう答えた。


「だって、だってぇ、カップルと間違われた時にそうですって言ってるのに何で好きってことに気づいてくれないの!?」


「えっ、雅哉(まさや)と栞奈ってそう言う関係だったのですか?」


 涼介(りょうすけ)は真顔で尋ねた。


「いや全然、栞奈とはただのクラスメイトっす」


 俺がそう言うと、栞奈は『ウワァァァン!』と叫びながら部室を出て行った。



        ◇



「てなわけで第四回、萩原雅哉を詰める会を開催したいと思います」


「よ、よろしくお願いしまっす」


「そう萎縮しないでよ。こっちが悪いみたいじゃん」


 またよくわからない会が始まった。ここ一ヶ月でもう二回目だ。ここ数ヶ月で何故か、俺は栞奈を除いたクラスの女子全員に詰められている。


「水島さんの気持ちに応える気がないなら振ってしまえばいいのに」


「ちょっと不誠実だと思うナ~」


「はよくっつけや」


「あんなに猛アタックしてるのに、どうして何もしないんですか!」


 正直、女の子達に詰められて悪い気はしない。何が理由なのかはわからないが。


「よくわからないけど、これまでの流れで水島さん関連なのはよく分かった」


 そう答えたら『今更!?』『まだ水島さんの気持ちに気づいてないのこの男は』『はよくっつけや』と、クラスの女子全員に総ツッコミを食らった。


「分かった分かった。よく分かってないけど、水島さんと話すればいいんすよね?」


「もう、それでいいわよ……」


「まったく、究極朴念仁星人のどこがいいのか、分からないわ」


 こうして、第四回萩原雅哉を詰める会は一応終わった。



        ◇



 水島さんと関係性を上手く表すなら隣の席にいるクラスメイトだ。


 ちょっとばかし、ボディタッチやら、抱きつきが激しいが、抱き癖があるクラスメイトだ。


 黒髪ポニーテールのうなじ、いい匂いしそうだなって思う程度には大事なクラスメイトだ。


 そう説明しているのに、誰も俺の言葉に耳を傾けてくれない。本当にこれ以上でもこれ以下でもないのに。


「第一、水島さんの気持ちを理解しろって、誰目線なんだろう。水島さんのことは水島さん本人しか知らないはずなのに」


 クラスメイトの考えがよく分からないなと思いつつ、今日も部室の扉を開く。


「さあ、ゴーストバスターズの部活動を始めようっす!」



◇こちらの作品もよろしくお願いします。

「九条一歌は独占したい」

https://kakuyomu.jp/works/16818622175773448072

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