魔法少女 ルミナスホワイト ~落ちこぼれ魔法使い君は、実は魔法少女の後継者です~

りすてな

絆橋高校 魔法科の落ちこぼれ


「へへへ、白雪ちゃーん、今日も相変わらず図体が目立つねぇ!」


「この見た目の癖して、初歩の身体強化魔法しか使えないってどうなってんだよ」


「この間の模擬戦で、勝ち星くれてありがとうよ!」


 絆橋高校に入学してから一か月。ここ最近俺は、登校する度に同じ魔法科に通う生徒達からこんな感じに扱われ始めていた。


 魔法科には、一学年でも一〇〇人以上の生徒が通っており、実際に教室こそ違えど、一年生であれば授業で学ぶ部分に大きな違いは無い。


 学年が上がれば細分化されてはいくものの、俺が今学んでいる授業内容は、数多くの魔法科の生徒が学んでいく範囲になる。当然、実戦形式の模擬戦も体育の授業代わりに行われ、そこで俺は都合の良い模擬戦相手となっていた。




 身長一九二センチもある目立つ図体に、白い髪と青い瞳で、入学当初では大変恐れられていた。


 しかし、こんな姿で初歩的な身体強化の魔法しか使えないのだと知られると、大日向おおひなた 白雪しらゆきという名前も相まって、途端に馬鹿にされ頑丈な身体は丁度良い的になってしまう。


 見た目とは合わない可愛く感じる名前と、いかにも魔法の能力に目覚めていそうな髪と目の色をしながら、訳あってそれが出来ていない俺は、見掛け倒しや期待外れと言った呼ばれ方をして、今や落ちこぼれ扱いだ。


 それでも、俺自身は大好きな婆ちゃんが名付けてくれたこの名前はとても気に入っている。


 身体も鍛えた分、身体強化の魔法でも十分に化け物退治には役には立っている。ただ、幅広く魔法を扱えた方がより効率が良いのも事実で、それが模擬戦の結果に繋がっていた。


 校門の前で、こうやって絡まれるのも今日に限った物では無かったが、この日は少し変わった相手がやって来た。




 俺の前に、取り巻きを連れた他の組の魔法科の男子生徒が、道を塞ぐように立っていた。先程俺を馬鹿にしていた生徒達は、彼が現れるとニヤニヤとした顔をしてその後ろに寄っていく。


 ツンツンとした茶髪に、俺程大きい訳では無いが、一八〇センチ近くはある身長。キリっとした自信に満ちた顔は、この学校で既に一際有名な生徒だった。


「大日向 白雪……一体いつになったら、落ちこぼれのお前はやる気を出すんだ?」


「悪いな朝丘、これでも既に出来る事はやっているつもりなんだ。俺はお前とは違う」


 身体が大きいだけで、特に俺を脅威と感じないのだろう。朝丘と呼んだ生徒はずいっと、前に出て来る。




 彼の名は朝丘あさおか 龍也たつや。俺とは対照的に、一年にして絆橋高校の実力者として知られている。それ位に魔法の才能に満ち溢れている顔は、俺を見ながら鼻で笑いだす。


「ああ、そうだったな。俺は魔法管理局から、既にAランクの魔法使いの認定を貰い、そこが主催する魔法競技でも大活躍だ」


 周囲に自分の肩書きを語り出す。その凄さは、俺も流石に知ってはいる。現にメディアへの露出も多い彼の名前を聞かない日は無い程だ。紛れも無い事実を静かに聞き続ける。


「片やお前は、やる気も実力も感じられない落ちこぼれ。その上無駄に派手でデカいときた。一体何の為にこの学校に通う?」


「決まっている、俺も魔法を扱う者の端くれ。自分のやるべき事を行い、進むべき道に進む為だ」


 今の俺に出来る事と言えば、地道な化け物退治しかない。学校で何と言われようともやる気はあるのだと、それを証明出来ればと悩んでいる。




 せめて意思だけは伝われと堂々としてみるが、向こうにはそれが悪ふざけに見えてしまったようだ。


「随分とふざけた態度を……その姿が周りに圧力をかけて悪い影響を与えているんだぞ! ハッキリ言って迷惑だ!」


「なっ、何だそれは……! 俺は誰かに迷惑をかけた覚えは無いぞ?」


「悪目立ちしていると言っているんだ! 魔法は初歩しか使えず、模擬戦では勝てないくせに、討伐任務と称して人通りの少ない所に行く姿が目撃されている!」


「皆が見落としがちな細かい場所を巡って、取り返しのつかない事にはしないようにしているんだ……飛べないから歩くしか無くて」


 非常に効率が悪いが、俺にはそれしか出来なかった。管理局へ報告もしている為、大した量では無いが記録自体は残っている筈だ。


 だが、見た目が目立つ俺がそんな所に行けば、当然誰かの目に嫌でも映ってしまう。単純な事に気が付かず、怪しい事をしていると疑われていた。


 落ちこぼれが変な事をしていれば、優等生が迷惑だと感じる理由も納得する。特に悪目立ちしやすい方だから、余計に強めの対応になる。




 どう言って誤解を解くべきか、頭を悩ませていると、朝丘は俺を見る視線を更にキツくする。


「あくまで自分は真面目だと言いたいのか、大日向? なら何故、そんな効率の悪い事をする。未だに能力解放に至っていないのはどういう事だ?」


 彼の指摘に、思わずウッと唸ってしまう。正直に言ってしまえば、俺にも婆ちゃんから受け継いだ能力はある。しかし、色々と条件もあり、それに頼るような状況にはなって欲しくは無かった。


「それとも、髪や目の色からして、既に解放してそれなのか?」


「いや、まだ解放はしていない……だが、俺の能力など解放しないに越した事は無い……」


 馬鹿にされるのは少し寂しいが、変身せざるを得ない状況になるよりかはマシだと思うと、今は平和なのだなと感じられる。


 婆ちゃんに聞かされた数十年前の惨状と、受け継いでしまった能力。そんな物に頼らずとも俺は、男らしく何とかやっている。




 しかし、それは個人の都合での話であって、他の生徒達には関係の無い話だ。曖昧な返答しか出来ない俺に対して、朝丘が声を荒げた。


「ふざけるなよ! 魔法科に入学する者達は皆、大なり小なり自身の魔法の才能を伸ばす為にやって来るんだ! なのにお前はなんなんだ!?」


 正に言う通りであり、今のままでは自分の才能を伸ばせないのは明白ではある。


「魔法を正しく使う気が無いのなら、今すぐ他の科に編入するべきだな。それとも、模擬戦の的になるのがお前の進むべき道なのか?」


「朝丘、お前からして見れば、俺が変な奴に思えるのはわかった……それは本当に悪いと思ってる。これからは気を付けて行動をしよう」


 俺にもやるべき事がある為、それを行うにもまずは魔法科のある学校に通わなければならない。


 これは絶対に譲れない物だったので、どうにかしてまずは朝丘を納得させなければ。こうなれば、管理局の記録を見せるべきかと、静かに睨まれているこの状況で考える。


 校門の前で沈黙し続けるのも、かなり目立ってしまっている。多くの生徒がこの一部始終を見ており、何だか悪者になったようで居心地も悪い。




 高校に入学してから、どうしてかどんどんと立場を悪くしてしまっていると、自己分析する。男らしくあればと身体を鍛えてはみたが、今のままでは駄目なんだとも感じ始めている。


 なら他に方法があったのかと、言葉に出来ない感情が胸の中でモヤモヤとしていく。すると、この空気を変えようとする声が聞こえた。


「君達、その辺で僕の幼馴染を馬鹿にするのは止めてくれないか?」


「なっ!? お、お前は、星影!」


「げっ……星影かよ……くそっ、普通科だった野郎が、急に覚醒しやがって……!」




 俺達の方を見て、朝丘よりも少し背が高く、黒髪に黒目の端正な顔立ちの男子生徒がこちらに近付いて来る。


 俺を助ける為に声を掛けたその生徒は、今は普通科の制服を着てはいるが、後数日で魔法科への編入が決まっていた。


 その容姿で周りにいた女子生徒は黄色い声を上げていて、取り巻きの男子はそれだけで動揺している。


 一瞬で空気を変えた俺の幼馴染、星影ほしかげ あきらは校門の前まで来ると、俺の横に並んだ。

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