後日譚
第33話 婚約と顔合わせ
婚約者選抜が明けて次の日、オリヴァーとダツミン侯爵夫妻がベルカント公爵邸に来訪した。オリヴァーとの婚姻に関する事柄を、令嬢フェルマータおよび公爵夫妻と話し合ったのだ。
フェルマータとオリヴァーの間には、初々しさと成熟した落ち着きが入り混じった独特な雰囲気が漂っていた。互いを信用する土壌は、婚約者選抜を通して育ち始めていた。二人は物理的にも心理的にも距離を縮め、心から支え合う伴侶となろうとしていた。
部屋の隅で控えるセフィーヌは、二人の様子を満面の笑みで見守りたかった。しかし彼女は、侍女として涼やかな笑顔を保ち続けた。仲睦まじい男女を羨望の眼差しで見つめる少女は、もうそこにはいなかった。
ベルカント公爵一家は話し合いの中で、ダツミン侯爵一家に選抜の詳細を伝えた。候補者の資質を試すために実施した手法とその意図を明かしたのだ。
ダツミン侯爵スペンサーと夫人コレットは、息子が無事にこの婚約者選抜という重圧を乗り越えたことに、深く安堵していた。コレットは微笑んだ。
「選抜で示されたオリヴァーの胆力があれば、騎士の昇格試験も心配いりませんわね」
オリヴァーは近日中に、三等騎士への昇格試験を控えていた。その職能は、各領地の騎士団において団長または副団長として騎士を率いることができる、というものだ。また、王都騎士団において、指揮官として下級騎士を指揮指導することも可能となる。王宮騎士団に転属する道も、この資格によって開かれる。
昇格試験で発揮すべき実力は多岐にわたる。まず試されるのは、儀礼や戦闘など騎士個人の資質である。加えて、いかなる環境であっても自身と部下を効果的に配置し、集団で任務を遂行する力も示さなければならない。
「まさにその通り。公爵ご一家のおかげで、倅がこれまでに身に着けたものの一端を垣間見ることができました。これは騎士として必要な資質に通じるものです。三等騎士への昇格も、時間の問題となるでしょうな」
スペンサーも、息子の未来に確信を抱いていた。
和やかな雰囲気の中、婚約の手続きは滞りなく進められた。両家は、今年の社交シーズンの終盤に結婚式を挙げることも決めた。王宮へ挨拶に赴くことや、手分けをして関係各所へ連絡することで一致した。
さらにその翌日、セフィーヌと母フランセ、そして兄セルジュとその妻エクレールは、モントリエ伯爵邸を訪問した。ジョナサンとの婚約に向けて、モントリエ伯爵家とチュモー伯爵家の顔合わせをするためである。
ベルカント公爵一家はセフィーヌに、モントリエ家への手土産として箱詰めの金環柑を持たせ、快く送り出した。
モントリエ伯爵家は、海岸にほど近い場所に邸宅を構えている。そこでは、ジョナサンとモントリエ家伯爵夫妻だけでなく、令息ジェラルドもセフィーヌたちチュモー家の面々を温かく歓迎した。
顔合わせの席で、セルジュはチュモー家を代表してモントリエ伯爵一家に挨拶をした。
「この度は、妹セフィーヌとの良縁を賜り、誠にありがとうございます。ジョナサン様の人となりはかねてより承知しており、妹の伴侶としてこれ以上ないお方と確信しております」
隣のエクレールも、夫に寄り添いながら丁寧に頭を下げた。
形式的な挨拶を終え、両家から堅苦しさが消えた。するとセルジュは、チュモー伯爵家当主の顔から、セフィーヌの兄でありジョナサンの友人でもある、一人の男の顔になった。彼は、ジョナサンの肩を軽く叩いた。
「ジョナサン、妹を頼むよ」
「もちろんだ、『義兄上』」
ジョナサンからジェラルドへの引き継ぎは順調に進んでおり、うまくいけば二年ほどで正式に発表できる見込みだという。ジェラルドは兄ジョナサンの手腕に感嘆していた。
「兄上の願いが叶い、このような喜ばしい形でセフィーヌ嬢やチュモー家の皆様とお会いできました。本当に嬉しく思います。奇跡は起こるものなのですね」
両家は昔から親しい間柄であったこともあり、新たな形で結ばれる縁を喜び合った。彼らは、婚約とその先の結婚に向けて、具体的な話を進めていった。
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