第27話 偽りの正義

木村優太が鈴木先生の個人情報をサイバー犯罪グループから入手し、それを悪用していたことが明らかになった。

しかし、美羽は、彼の行動には単なる金銭欲や個人的な恨みだけではない、別の動機が隠されていると感じていた。

美羽は、木村優太のSNS投稿を再確認する中で、ある共通のテーマを見出した。

それは、**「腐敗した大人への告発」**というものだった。

彼は、自身のSNS上で、教育現場の闇や、教師の不正を告発するような内容を頻繁に投稿していたのだ。


「木村優太は、自分を『正義の味方』だと思い込んでいるのかもしれないわ。」美羽は推測した。

「鈴木先生の秘密を暴くことで、自分こそが正しいと世間に示したかったんじゃないかしら。」


健太は、木村優太が参加していた匿名掲示板のスレッドをさらに深く解析した。

すると、木村が、鈴木先生の個人情報を売買していただけでなく、その情報を元に、他の学校関係者の情報も入手しようとしていた形跡が見つかった。

これは、木村優太が、鈴木先生だけでなく、他にもターゲットにしている人物がいることを示唆していた。


五十嵐刑事は、サイバー犯罪グループのメンバーの一人が、かつて木村優太が在籍していた中学校の元教師であることを突き止めた。

その元教師は、過去に不祥事を起こして学校を追放されており、その件に鈴木先生も関与していたことが明らかになった。

つまり、木村優太は、鈴木先生への個人的な恨みに加え、その元教師の復讐心にも利用されていた可能性が出てきたのだ。


美羽は、この情報に驚きを隠せないでいた。

事件は、個人の問題から、より大きな陰謀へと発展しようとしている。

木村優太は、自分では正義を振りかざしているつもりだったかもしれないが、実際には、より大きな悪に利用されていたのだ。

美羽は、木村優太がサイバー犯罪グループの「駒」として動かされていた可能性を視野に入れ、慎重に捜査を進める必要性を感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る