第11話 歪んだタイムライン

美羽は、健太が指摘した「タイムスタンプが不自然な写真」の真の意味を理解した。

楓のSNS投稿は、リアルタイムで更新されているように見せかけて、実際は巧妙に加工されたものだったのだ。

そして、その核心にいたのは、誰もが背景として見過ごしていた、たった一枚の観葉植物の写真だった。

その観葉植物の葉の向きが、ある時期を境にわずかに変わっているという、ごく些細な変化が、楓の投稿が特定のスタジオで撮影されたものであることを示唆していたのだ。


「この観葉植物の微妙な変化は、つまり、楓さんが自宅ではなく、どこか別の場所で撮影していた証拠よ。そして、その撮影場所こそが、例のIT企業が関わっているスタジオなのではないかしら?」美羽の推測に、健太も深く頷いた。

「あり得るな。プロが使うような合成技術を使えば、いくらでもタイムスタンプを偽装できる。そして、スタジオなら、背景を統一したまま、時間をずらして撮影することも可能だ。」


この仮説が正しければ、楓のSNSは、彼女の本当の状況を隠蔽するための**「デジタル・インパーソネーション」、つまり第三者によるなりすましだったことになる。

美羽の脳裏に、IT企業経営者である加藤陽介**の顔が浮かんだ。

彼の会社は、まさにそうしたデジタル技術を専門としていた。

加藤が、この事件に何らかの形で関与している可能性が極めて高くなった。


美羽たちは、加藤陽介のIT企業に関する情報をさらに深く掘り下げ始めた。

会社の評判、過去のプロジェクト、従業員の構成など、SNSや公開されている情報を徹底的に調べた。

すると、加藤の会社が、以前、著名な芸能事務所と提携し、タレントのSNSブランディングを手掛けていたことが判明した。

その中には、楓と同じようなインフルエンサーも多数含まれていたのだ。

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