第8話 スピーカーの警告

廃工場で得た手がかりと、「シャドウ」からの謎めいたメッセージに頭を悩ませながら、美羽は自宅に戻った。

疲労困憊でリビングのソファに倒れ込むと、突然、部屋のスマートスピーカーが起動し、合成音声でメッセージを読み上げ始めた。


「君は正しい道を進んでいる。しかし、まだ真の『影』には気づいていない。」


その声は、まるで「シャドウ」のメッセージをそのまま読み上げているかのようだった。

美羽は飛び上がってスマホを握りしめた。

自宅のスマートスピーカーが、なぜ「シャドウ」のメッセージを?

それは、「シャドウ」が彼女の個人情報、ひいては自宅のネットワークにまでアクセスしていることを意味していた。

美羽は、恐怖と同時に、この状況がただならぬ事態であることを悟った。


美羽の異変に気づいた父と母がリビングに駆け寄ってきた。

美羽の父は、娘が事件に深く関わっていくことに強い不安を感じていた。

「美羽、もうやめなさい。お前の身に何かあったらどうするんだ?」彼は娘の身の安全を案じ、事件から手を引くよう強く促した。

美羽の母もまた、心配そうな眼差しで美羽を見つめていた。

しかし、美羽は、真実を突き止めるまで引き下がるつもりはなかった。

彼女の推理の虫は、もはや恐怖に勝る好奇心へと変貌していたのだ。


翌日、健太とこの出来事を共有した美羽は、さらなる警戒を強めた。

健太は美羽のスマートスピーカーのセキュリティを強化するとともに、この事態から「シャドウ」が相当な技術力を持つ人物であると推測した。

同時に、彼は「シャドウ」のメッセージに隠された意図を読み取ろうとした。


五十嵐刑事も、楓の失踪が単なる家出ではないことを確信し、捜査を本格化させていた。

彼女は、楓のマネージャーである小林沙織が、楓への誹謗中傷を裏アカウントで行っていたことを突き止める。

沙織は楓の人気への嫉妬を認めたが、失踪への関与は否定した。

しかし、彼女は楓が失踪直前、ある人物と激しく口論していたのを目撃したと証言。

その人物こそが「シャドウ」の正体であり、真犯人であると沙織は語ったが、具体的な人物名を挙げることはなかった。

沙織は、その人物の影に怯えているようだった。

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