第7話 王子との健康改善3

―――そして、自分の血液研究に熱中していた頃―――


 朝5時ごろ、私は馬車を走らせて、フィリップ様の邸宅まで向かう。


 吸血鬼の夜は遅い。


 日が出る頃に、眠るのが一般的だ。


 だから、私もフィリップ様に合わせて、朝5時頃まで血液研究を続けることがあった。


 そして、今夜はフィリップ様と会わない予定だったけれど、こんな日に、過去最高の血液が採取できた。


 私は、嬉々として、フィリップ様の寝室をノックする。


 白いローブを着た眠そうなフィリップ様が現れる。


「フィリップ様、是非飲んでください。過去最高の出来です!」


 私は試験管に入った血液を見せる。


「……でも、もう歯磨きしたし……今は飲みたくない……」


 その返答に、私はフィリップ様に悲しそうな眼差しを向け、


「そうですか……残念です……それなら、私が飲みます……」


 試験管の蓋を開け、自ら飲もうとすると、


「ああ、わかった、わかった。飲むよ、飲む」


 と、私から試験管を奪い、グイっと飲んだ。


 フィリップ様はやはりお優しい。


 作戦は成功した。


「健康診断まで、あと20日です。一緒に頑張りましょうね、フィリップ様!」


「……うん……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る