第6話 28年目の再会、時を超えた砂町の奇跡!


「もしかして、巨人なおと?なお、なのか?」



「ん?辰にい?辰兄かーーー!!」



『はいダメーー!アウト!トリプルプレーだよあんた!』

堕天使ラムが強引に時を止めた!



『うわ凄いな!堕天使ってこんな事まで出来るのか?』



『天使なら300秒行けるけど堕天使は60秒が限界!要点だけ言う。なぜ辰兄たつにいって反応する!ダメでしょーが!28年前に死んでるんだよあんた!この後の会話どーすんの!』



『確かに……突然だったからつい…』



『時間が無いから結論!今のやり取り記憶、辰兄たつにいから消去するからやり直し!

この墓参りの理由はルーツが砂町の聖子母さんを上手く使いなさい、良いわね。頭脳ブレイン:6,000以上なんて日本人に100人もいない天才児なんだから。やばっ!タイムリミット!!』



─────



「えっ!え~と、確かになおって名前ですがどちら様ですか?」



「あっ!ああそうか……そうだよなハハハよーく似てるが、考えてみると巨人なおとが生きてりゃ今45歳のおっさんだ。砂町リトルのTシャツどう見ても中学生ってとこか?」



「いいえ小6です…」

『辰にい…俺の歳を覚えていてくれたのか……』



ラム

『怪しまれるから感情移入はしないように!』



「そうかだからか…なおは俺の弟も同然な奴でな、空襲で亡くなったんだがボウズと同じで小学生で190超えてたw横顔もそっくりだったから驚いたよ…」



そう言うと辰夫は墓石に水をやり、花を手向け線香に火をつける。



「で?織田家の墓に手を合わせていたがどんな関係なんだ?ましてや小学生が1人で墓参りに来るなんて、あんまし聞かねえな」



口調は穏やかだが目の奥は笑っていない。



「僕のひいお婆ちゃんが砂町出身で旧姓は織田、織田あゆみと言います。」



「俺は先祖代々砂町の人間なんだが織田あゆみさん…悪いが知らんな。ひいお婆ちゃんなら歳もだいぶ上だろう、砂町のどこら辺りなのか聞いてるか?」



「いえ、母が1歳の時に病で亡くなってるらしいので詳しくは…あっ!実家は確か元八幡って所にあるって」



「それは今の南砂だ。深川の富岡八幡宮は江戸時代南砂にあって移転したんだよ。だから八幡って呼んでる。北砂と南砂じゃ学区も違うし、遠いとこだと2kmは離れてる。まあ別の町だな」



「そうなんですね。砂町リトルの練習に来るのに南砂町駅を使ってるので。」



「あ~4年前に出来た駅だ。大手町まで15分で行けるから随分と便利になった。ボウズは何処から通ってるんだ?」



「高田馬場です。東西線だと25分で着きますよ」



「高田馬場って新宿区だよな?ボウズ。。。いや悪い巨人なおとだったな。馬場の近くに西武新宿線の下落合駅ってのがあるが知ってるか?」



「えっ!知ってるも何も家の住所は高田馬場ですが、最寄駅なら下落合駅ですよ」



「そうなのか…下落合で織田巨人…これも何かの縁だな…」



「縁ですか?」



「なおには許嫁いいなずけがいたんだ…遠山美幸ってそりゃあ凄い美人のな…その父親が下落合出身だったからついな…すまん関係無い話だ」



「えっ!!おじさんが!」



ラム

『ブブーーーダブルプレーだよ!!』



「なんだ!おじさんが?って知り合いみたいな言い方してどうしたw」



「…ごめんなさい。下落合の遠山さんって聞いて僕もついw

江戸小紋の生地で手さげ袋や座布団、財布なんかを作ってるってのが近くにあって、家に生地を頼んでくれるお客さんなんです。」



「へえ~なおの実家は江戸小紋の工房なのか?」



「はいそうです。祖父がやってますが父も2人の叔父も継ぐ気がなくて、爺ちゃんも別に無理強いしない人なんで…それよりそのさんは今はどうされてるんですか?」



「ん?ああ~東京大空襲の日から神隠しでな…28年経った今も戦争行方不明者だ…」



ラム

こらえるのよ…泣いたりしたら本当に不自然だからね…』



「そうなんですね………」



「それで?南砂の織田あゆみさん曾孫ひまごがどうして1人で墓参りしているんだ?」



「はい、ひいお婆ちゃんの孫が僕の母親で旧姓は平野、今は織田聖子です。小さい頃に父親、僕の祖父に連れられて砂町銀座のおでんを食べたそうで。」


辰兄に土産のおでんを見せる


「それで今日の様な練習が午前中だけの日に、おでんを土産で頼まれるんです。」



「……平野聖子?やはり知らんな…年齢は?差し支えなきゃな」



「36歳です。それと母は池袋が地元なので、砂町の学校は出ていません」



「なるほど、俺は今年50歳。どっちにしろ14歳も年下なら接点は無いな」



「母は昭和12年生まれ。子供の頃、織田巨人おだなおとって、もの凄い高校野球の選手が日大一高にいて砂町出身だったと。

僕の名前を巨人なおとにしたのも、幻の名選手にあやかりたかったのが理由らしいです。」



「そうか…ボウズは巨人の生まれ変わりみたいだなwそれで母親に織田家の墓参りまで頼まれたのか?」



「終戦後の昭和28年(1953年)に祖父と母が元八幡にある織田本家の法要に呼ばれたらしくて、その時にお墓の話を聞いた母が2~3年に1度手を合わせていたみたいで、名前の由来だから僕にも1度行くようにと」



「そうか…ほら線香だ一緒に拝もうか」



辰兄と2人前世の自分に線香を手向けてると、不思議な事に力がみなぎってくるのが分かった。

そして微かにだがハッキリと頭の中に入って来た言葉



【遠山工房…今年3歳…孫娘…墨田区両国緑1丁目…】



『!!!これは?ラムじゃ無い?』



『どうしたの?何か聞こえたの?』



『いや……後で話す……』



墓参りを済ませると巨人なおとを南砂町駅まで車で送ると辰兄に言われ、黒塗りのベンツが登場。



「うわ!!これってベンツの最新型W109・300SEL6.3ですよね!!すげーーー本物初めて見た!!」



「まだ日本には3台しか無いからな。にしても小学生なのに良く知ってんな!"なお"は車が好きなのか?」

親しみを込めと呼んでくれる辰兄たつにいに嬉しくなる。



「はい大好きです!もし野球やってなかったらカーレーサーになりたい位に!」



「ハハハそうか。砂町で丸井工務店って聞けば誰でも知ってる。練習帰りに何時でも寄ってくれ、ほら名刺だ。電話入れてくれればグラウンドに迎えに行く、俺が現場に出てる時は事務の若いのを行かせる………ん?」



「どうしました?」



「待て!まてまてまて!!グラウンドって砂町リトルって!織田だとーーーボウズ!!お前小4から4番張ってる怪物織田巨人いまごろ わらか!!!」



「えっ!え~と怪物かどうかは分かりませんが、この3年間砂町リトルの4番は僕だけですねw」



「うわーーー!!マジかーーーサイン!サインくれ良いな良いよな!お前は絶体プロ野球界の大スターになる!その選手の小6のサインを持ってる俺は鼻高々だガハハハハハ」



そのまま辰兄が経営する工務店の事務所で、色紙100枚にサインを書かされる羽目になった"なお"。



『サイン100枚なんてお安いご用だ。50歳でまだまだ元気な辰兄に会えたし何より美幸みいちゃんが戦争行方不明者って事は生きている可能性だってある。そんな情報聞けただけでもありがたい…それにあの声…』



ラム

『大体の予想はつきますが、後で詳しく調べてみましょう。』




~ ~ ~ ~ ~




28年ぶりの辰兄との再開

もちろん嬉しいのですが何故月命日の1日前だったのか?後日なおが聞いたら


「あーーーあれな。実は日にちを1日勘違いしてたんだ。50歳ともなると物忘れも出てくるんだよガハハハハハ」

と豪快に笑う辰兄でしたw


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