うん、何か入ってきた。

ああ。貴方はお客人。


私は執事です。この屋敷の執事です。


どうぞおかけになって。


初めまして。


お名前は、いえ。かまいません。

聞いたところで何もなりはしませんからね。

それで貴方は何をなさっているんですか?

メイドたちの話では、色んな人の話を聞かれているとか。


ええ、存じておりますよ。

しかしいけませんね。高貴な方たちにもお話をされているとか。

危険で大変失礼なことですから、やめていただきたいと思っております。


え?

お屋敷について、聞きたいと。

かまいませんが、その前に貴方、外へ出る必要はないのですか?

いつまでもいてくださってかまいませんがね、高貴な方たちは気にもなさいません

でしょうから。

しかし、かまわないのですか?

貴方が、ですよ。


もうお気づきかと思いますが、このお屋敷は一度入ると出るのが難しいのです。

私は外には出られますよ。執事ですからね。

でも高貴な方たちですら、外に出るのは困難なのですよ。


それで、どういった話を聞かれているんですか?


ええ、お屋敷のこと。

それと、恋人のこと。


ああ、それで。


恋人のことを知りたいのですか?でしたら屋敷の上へと行かなければいけません。

恋人はそこにおります。

私が会った事があるか?

勿論、ございますよ。

恋人は誰にでも親切で、穏やかです。


心が穏やかであればあるほどに、恋人はとても親切です。


どういった人なのか?


疑ってらっしゃる?恋人のことを。

ならば上に向かっていらっしゃい。そうすれば分かりますよ。

それにね、私たちは貴方を受け入れてはおりますがね、それは好意であるだけで

善意ではないんですよ。

お分かりになっていれば十分。


なんですか?

ああ、沢山の人に会って話すと、わけがわからなくなると。


お屋敷の中はそういうものです。

貴方は貴方が信じたものしか知らないから、そうなのですよ。

目に見えるものだけが全てではないと、どなたかから教えていただきません

でしたか?

人は自分勝手なものですから。

そうやってしてしまうものです。


このお屋敷の中で得たものをどう使うかは貴方次第ですよ。

特段、必要なものではないでしょうがね。


おや、もしかしてお腹が空いていますか?

では私と何か食事をしましょう。

この屋敷の主人は食事を必要としませんが、私は必要としますので

何か食べましょう。


お嫌いなものはありますか?肉、魚、お酒、多くのものが豊富です。

ん?どうして戸惑うのですか?

ああ、食べてはいけない。などと言われたのですか?


ならばお好きにどうぞ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る