第7話 才能と、圧力と
「設計ってのはな、地面の上に“意味”をつくることだ。で、その意味が安っぽければ、建物なんかただの箱だ」
それが、最初の講義で言われた言葉だった。
講義室には、地方や海外から集まった学生たちが座っていた。
そのなかには、有名コンペで賞を取ったという帰国子女。設計事務所の親を持つ天才少女。
かなめは、早くも圧倒されていた。
(みんな、考えてることのレベルが違う……)
手元のノートにびっしり書き込みながらも、焦りは拭えない。
講義後の課題は、「五感で設計する一坪空間」。
自由すぎるテーマ。正解はない。でも、正解を出さなければ、教授には見向きもされない。
「……ご飯、食べた?」
ふいに声をかけてきたのは、隣に座っていたショートカットの女子学生だった。
小柄でハキハキとした声。服の袖はペンキだらけ。
「私は藤井レイっていうの。千葉から来たんだ。君、地方出身っぽいけど、どこ?」
「あ、えっと、栃木です。有栖川かなめって言います」
「有栖川……いい名前! なんか、建物っぽい!」
「建物っぽい……?」
「こう、堅実だけど、実は奥行きがある感じ。わかんない? まあいいや。ご飯行こ!」
レイとの出会いが、かなめに「都会での初めての友達」をもたらす。
タミとはまた違う、言葉の多い、エネルギーの塊みたいな子。
そして――このあと、二人は一つの大きな課題に巻き込まれていく。
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