第71話 夜逃げ
オメガドライブには貯水槽があり、
そこにさっきのナノマシンを混ぜて撒き散らしながら航行することで、
擬似的な雨を作る。
この雨で黒幕のナノマシンを除染できるはずだ。
ただ問題がある。
まずは、オメガドライブの整備だ。
今ロボットたちが総出で整備と掃除をしてくれている。
俺もバニラと手分けして、
システムの確認をしている。
急ピッチで行ってはいるものの、
二時間くらいほしい。
後、住民の移動だ。
そっちはバネロに頼んでいるが、
人数が人数なので二時間はかかるらしい。
「この間、黒幕がじっとしてるとは思えない。
バネロに詳しい話しはしたから、
警戒してくれるけど。
乗っ取られる前兆、とかなさそうだしな。」
俺は情報端末の画面を山ほど出して、
自分の回りに浮かせている。
システムの中には問題ない。
ただ、古いデータやごみデータの整理と隔離に手間ひまがかかる。
「バネロもよくあんな走り書きで、
そんな推理したよな。
ありえねぇだろ。
どんだけ頭が良いんだよ。」
バニラは女神と一緒にシステムのメンテナンスを手伝ってくれている。
演算能力はオメガドライブの方が上らしいが、
バニラの力でも十分役立つレベルだ。
「御主人様、
こちらの処理はおよそ五十二分で終わります。」
「よし。
リトス、そっちは?
三十分で終わるか?」
「む、無茶言わないで!?
皆必死で運んでるんだから!」
黒幕がリトスの身体から出ることを渋ったのは、
廃墟に解放軍を隠していたからだった。
オメガドライブが飛ぼうとしたら、
即座に撃ち落とすつもりだったらしい。
あの後、
服がズタボロでセクシーなリトスに俺の服を与えた。
ちゃんと事情を説明して、
廃墟の解放軍たちを止めてもらった。
あの時の掃除ロボの群れには、
船内の掃除を頼んでいる。
おかげで積もりに積もっていたホコリが一掃されている。
リトスには解放軍を集めてもらい、
必要な資材を運んで整備ロボットたちに渡すように頼んだ。
「バネロ、そっちは?」
「ロボットたちも手を貸してくれている。
このペースならもうすぐだ。
確認だが、
全員裸でなくてもいいんだな?
その雨を服越しで浴びればいいんだな?」
「あぁ。
その雨を飲んだら早いらしいぞ。
飲む場合の必要量は百ミリリットルだから、
大きめの一口だな。」
黒幕の乗っ取り防止も予て、
音声通信で俺、リトス、バネロ、女神を繋いでいる。
他の円卓も繋ぎたかったが、
バネロに任せることにした。
「女神、状況は?」
「簡易なメンテナンスだと思っていましたが、
ロボットたちは私のフルメンテをしてくれています。
後少しで終わるそうです。
システムのメンテナンスはいかがですか?」
「あのね、過去のデータを残したいのは分かるよ。
でもね、保存領域作って、
圧縮か何かして保存しなよ。」
「はははっ。
昔同じことで同僚に怒られました。」
笑ってんじゃねぇよ、女神様よぉ。
ちょっとイラっとしたが、
手を止めるわけにいかない。
グッとこらえて作業を進める。
バネロから通信が入る。
「すまない。
保護施設の中はどうする?
一部の男にも、
医療用ナノマシンを使用しているぞ。」
あぁ、俺が乗っ取ったわ、収容所。
コンソールの操作から入室、
独房を開けたりも全部俺に紐付けたから他の人間じゃ操作ができない。
そりゃ面倒だ。
俺は頭をかきむしって言う。
「後で俺が直接向かう。
権限もチップか誰かに譲渡したいし。
収容所のそばで合流しよう。
とりあえず、
壁の内外問わず全員に雨を浴びせなきゃ。」
「分かった。
リトス、どうだ?」
「解放軍は全員資材運搬の前に全員その水を浴びました。
私を含めて解放軍は既に除染済みです。」
黒幕の妨害を想定しつつ、用意していく。
外はとっくに深夜。
夜明けが近い。
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