第9話 作品タイトルの話

 KADOKAWAファンタジア文庫より絶賛発売中のライトノベル「魔王は扇子で蕎麦を食う〜落語魔王与太噺〜」制作備忘録の続きです。


 作品本文はほぼ出来上がり、キャラクターデザイナーさんも決まった頃に未確定だったものがある。作品タイトルだ。

 初書籍の本作にとって吉好の事を知らない方に手に取ってもらうには表紙デザインと同じくらいに大事な事項である。


 本文を書き進める上で全くタイトルがないのも困るのでとりあえずの仮タイトルとして「落語のまおう様」というタイトルは付けていた。

 個人的に作品タイトルであらすじを説明しちゃっている長いタイトルには抵抗があった。

「現世に召喚された美少女魔王とのドキドキ前座修行ライフ〜天才前座の僕がチートスキルに覚醒して高座で無双状態!?〜」みたいな(笑)

 もっとも長いタイトルというのはウェブ発の作品だったらタイトルだけでまず読んでもらうためにって意味もあるのだが。


 編集さんから「そろそろ正式タイトルを決めましょうか」という話があった。

 タイトルを決めるにあたってできるだけ落語という言葉をそのまま使わずに落語ものとわかるタイトルにしましょうとのこと。

 落語を使わずに落語とわかるタイトルってなんだろう。「〜噺」はもうあるし。


 色々とアイディアを出していく内に思いついたのが落語のサゲ=オチのセリフだ。

例えば『饅頭怖い』の

「この次は渋いお茶が一杯怖い」

 とか『火焔太鼓』の

「半鐘はいけないよ、オジャンになるから」

 とか落語のサゲのリズム感が最近のラノベタイトルっぽいなと気付く。

 試しにラノベのタイトルを落語のサゲっぽく発音してみた。

「いやぁ、負けヒロインが、多すぎる」

「いやぁ、誰が勇者を、殺したか」

 なぜか「いやぁ」を付けないと言いづらかったが(笑)


 これはイケるんじゃないかと落語のサゲを色々ピックアップし「饅頭怖い」のサゲが作品テーマ的にもよかろうとこれをもじってみた。そして思いついたタイトルが

「魔王は高座の次はお茶が一杯怖い」

だった。

 既にお分かりの通りこのタイトルは没になる。元々の落語のサゲを知らないと通じないだろうという事だ。それはそうか(笑)


 この後も色々と協議して最終的に編集さんが決めてくださったのが


「魔王は扇子で蕎麦を食う」


である。先ほどの吉好の考えたタイトルと比べてなんともスタイリッシュ(笑)

 落語を知らない人でも落語は扇子で蕎麦を啜るイメージはあるだろうし、これだけで落語ものとバチっとわかる。


 では吉好のアイディアは全くなかったかというと少しだけある。副題の方だ。

 最初編集さんが出してくれた副題が

「〜落語魔王浮世噺〜」

だった。主人公ヨタやハチ、師匠の亭号が浮乃家だから「浮」世噺というのもあるのだろう。

 オシャレでとてもいい、いいけれどオシャレすぎるかなとも思ってしまった。

 本作のストーリーはシリアスなだけでなくコミカルなシーンも多々ある。そんなコミカルなイメージと、主人公のヨタを引っ掛けて

「〜落語魔王与太噺〜」

はどうかと提案してみた。与太話という言葉もあるしね。

 編集さんからは「いいじゃないですか。これでいきましょう」と言ってくださりタイトルが

「魔王は扇子で蕎麦を食う〜落語魔王与太噺〜」

に正式決定した。


 それから本文の著者校正、各種店舗の特典SS作成ほかまだまだやる事は山積みだったがそこはまたの機会に語るとして、ついに3月19日に発売日を迎えることとなる。


続く


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