彼女と僕の口外法度《かくしごと》~地味で巨乳なクラスメイトの秘密を知ってしまった僕の話~

宮地拓海

プロローグ 高名瀬さんの秘密


 まるでマンガみたいだ。



 なんて、そんなことを言う人がいる。

 いわゆる『ベタ』というヤツで、それでいて現実離れした、「そんなこと起こるわけないだろう」というような出来事に遭遇した者の脳裏にふと浮かんでくる言葉。

 それが、「まるでマンガのようだ」なのだろう。


 そして今、僕はそのまるでマンガのような出来事に遭遇している。



 誰も寄り付かない夕方の旧校舎の一室。

 僕が隠れ家としてよく利用しているその教室に、今日は先客がいた。


 クラスの地味で巨乳な女の子。

 たしか、高名瀬たかなせさん……だったか?


 いつも、教室の自席で静かに本を読んでいて、誰かと談笑することも、声を上げてはしゃぐこともない物静かな女子生徒。

 そんなイメージで、そんなイメージですら今彼女を見てから「そういえばそんなイメージだったな」と思い出すくらいの、とにかく印象の薄い女の子だ。


 彼女の胸が他の女子生徒と比較してかなり大きいのだということも、今この場で彼女と向かい合って初めて知ったくらいだ。



 いつものように無人の教室にやって来た僕は、いつものように無人であるはずの教室のドアを、いつものように開け放った。

 そうしたら、教室の中に彼女がいて、彼女は突然入ってきた僕を見て盛大に慌て、立ち上がり、後ろ手に何かを隠した。


 その慌てようは凄まじく、彼女が座っていたのであろう椅子が机にぶつかりガタンガタンと大きな音を鳴り響かせたくらいだ。


 振り向きざまに両腕を咄嗟に背中の後ろへ移動させる。

 もしかしたら、立ち上がった時に他の女子生徒と比較してかなり大きめな胸が激しく上下したことによる負荷も加味されているのかもしれない。


 とにかく彼女のそんな動作が、おそらく普段からかなりの負荷をかけられているのであろう彼女のブラウスのボタンを弾け飛ばした。


 さらには、その下に隠されていた淡い桃色のブラジャーのフロントホックも同時に弾け飛んだ。



 その光景を見た時、僕は思ったわけだ。



 まるでマンガみたいだ――と。



「きゃあ!」


 背中の後ろに回されていた彼女の両腕が、今度はあらわになった胸の谷間を隠す。

 彼女の右手には、携帯ゲーム機が握られていた。


 彼女はそれを隠そうとしていたらしい。

 教室で静かに読書をする物静かな彼女のイメージには、確かにそぐわない。


 けれど、そんなものはどうでもいい。

 それ以上に、先ほどのマンガみたいな事故とその時の光景が網膜に焼き付いて、頭の中はそのことでいっぱいになっている。


 とんでもない物を見てしまった。



 その日、僕は特に接点もなかったクラスの地味で巨乳な女の子の秘密を知ってしまった。


 彼女の――



 高名瀬さんの胸の谷間には、『コンセント』があった。






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