第13章
──あの夜、私たちは初めて一線を超えた
ずっと抑えてた感情も、理性も
全部崩れて
お互いに抱き合ったまま何度もキスを重ねた
でも全てが終わった後
私はずっと彼の胸の中で静かに泣いていた
苦しくて
嬉しくて
怖くて
幸せで
全部が混ざって涙が止まらなかった
「玲那…」
優しく名前を呼ばれ
私はそっと顔を上げた
涙で濡れたままの頬を
飛悠が静かに撫でる
「…ねえ」
声が震えながら漏れた
「ん?」
「…私たちって、何?」
聞かずにいられなかった
ずっと好きだった
でも、“お客さん”のままじゃ嫌だった
だから今、ちゃんと聞きたかった
飛悠は少しだけ苦しそうに目を伏せた
そしてゆっくり息を吸ってから
優しい声で言った
「…玲那が大事だよ」
「……大事…?」
「好きだってこと」
「…ほんと?」
頷いたあと
飛悠は私の手を優しく握った
「…ちゃんと俺の彼女だよ」
──彼女
その言葉を聞いた瞬間
胸の奥がじわっと熱くなって
また涙があふれてきた
「…うれしい」
声が震えながらも笑った
少し落ち着いたあと
私はそっと彼の手を握りながら、照れた声で言った
「…ねえ」
「ん?」
「これからは…二人のときだけでいいから」
「……?」
「“悠”って呼んでもいい?」
飛悠は一瞬驚いてから
ゆっくりと微笑んだ
「……ああ」
「ほんと?」
「もちろん」
そして、少し照れくさそうに私の髪を撫でながら言った
その声が嬉しくて
私は彼の胸の中でもう一度、そっと顔を埋めた
──やっと手に入った”私だけの人”だった
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