第1話


友達に無理やり連れてこられた夜の街___



高層ビルの最上階


黒く光る扉をくぐると

まるで別世界だった




「玲那…緊張してる?」


横で友達が軽く笑う


「別に」


冷めた声で返した


正直、緊張よりも──

やっと違う世界に入れた気がしてた



学校の男子なんてガキみたいで


くだらない話しかできなくて




イケメン?優しい?

そんなもん何回付き合ってもすぐ飽きた


「…玲那、ほんと変わってるよね」


友達は苦笑いしながらグラスを弄った




「だってさ、もうどうでも良くない?同い年とか」


「…まぁね」


お金のことだって特に心配してない


バイトで稼げるし、親もうるさく言わない



それよりも

退屈な毎日から抜け出したくてしょうがなかった


 


「春川さん、お連れします」


案内されたソファ席に座る

薄暗い照明と、グラスの中で揺れる氷の音だけが静かに響く



そこに現れたのが──彼だった


黒のシャツにシルバーのネックレス

目が合った瞬間、息が止まった




「……こんばんは」


低く落ち着いた声


目が笑ってない


「担当の飛悠(ひゆう)です」


「…春川 玲那(れな)、です…」




思わず目をそらす

けど、心臓だけが騒がしかった


「高校生?」


「…なんでわかるの?」


「なんとなく」


その返しが妙に冷たくて

だけど逆に

もっと話したくなる自分がいた


──こういう人に、惹かれたことなんて一度もなかったのに


 






あの日から




___私の全部が少しずつ狂い始めた

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