23.稲荷山の夕日
湖西線に乗って、京都駅へと戻る僕たち。時刻は、昼と夕方の狭間という感じだろうか。
「ふふふ、京都に戻ったわね。」
咲姉ちゃんがうんうんと頷き、僕と同じように時計を見て、今の時刻を確認する。
「とりあえず、この時間だと、一箇所くらいは回れそうかしら。ああっ、でも、終了時間とかがあるかな?」
咲姉ちゃんの言葉に僕たちは頷く。
確かに、一箇所観光地は回れそうな時間。だが、時間も時間なので、閉門時間、つまり、その観光地の営業終了時刻も加味しなくてはならない。
今から回るとなると、夕方、二十四時間営業のようなところがいいかなと思う僕。
少しスマホを取り出す僕。流石に、営業終了時刻は、調べないと出て来ない。
夜もやってそうな所は、お寺ではなく、神社だろう。誰でも無料で入れそうな神社。そうなると、一個所、ピンとくるものがあった。
僕は皆の顔を見て頷き。
「そしたら、一箇所、心当たりがあります。よくテレビにも映る、そんな場所に行きましょう。」
僕の一言にうんうんと頷く皆。
京都駅から湖西線の電車を降りた僕たちは、そのまま、通路を南へ進み、在来線のいちばん南側のホームにやって来た。
ここは、奈良線という路線の乗り場で、文字通り、奈良まで向かう路線だ。
といっても、奈良線の大半の区間が、京都府内であり、何なら、地図上では京都府だけで完結してしまう路線でもある。奈良県内は、別の路線、関西本線に乗り入れるという形で、奈良市まで進んでいく路線なのだ。
「今度奈良の方も行きたいわね。」
電車を待っていると、咲姉ちゃんの声がする。
「はい。奈良公園の鹿ですね。」
咲姉ちゃんの声に樹里さんが反応する。
「まあ、まあ、とりあえず、今回は、京都を満喫しましょう。」
あすかさんが、ニコニコと笑って、そう発言すると、皆はうんうんと頷く。
そうして、ホームにやって来た電車に乗り込む僕たち。
青いラインが入った、205系の車両。かつては、東京でも、黄緑、緑のラインをまとって、山手線、埼京線を走行していた。
その205系車両も、関東方面ではあまり見かけなくなり、関西の古い車両を長く使うような路線でしか見なくなった気がする。何なら、湖西線や、奈良線では、数年くらい前までは、117系や、103系など、もっと古い車両が走っていた。
そんな思いを感じながら、僕たちを乗せた電車は、奈良方面へと向かい、京都市内を南下していく。
京都駅を出ると、次の奈良線の停車駅は、東福寺という駅。文字通り、近くには東福寺という寺がある。
「ここじゃないの?文字通り、お寺みたいだけど。」
あすかさんが聞いてくるが、僕は首を横に振る。
「そうですね。この次の駅ですね。この東福寺は、秋の紅葉がきれいなので、またその時にでも。」
僕がそう言うと、皆はうんうんと頷く。
そういえば、秋の京都も行ってみたいと思う。秋の時期は本当に綺麗なのだろうなと思いながら、列車は次の駅を目指していく。
次の駅は、稲荷という駅。この駅で下車する。稲荷という駅名。そう、つまり、ここは伏見稲荷大社のJR線の最寄り駅だ。この区間をしばらく同時に並走している、京阪電車にも、伏見稲荷という駅があるが、伏見稲荷への最寄は、こちらのJRの方が近い。その証拠に、電車から、伏見稲荷大社を形作っている、稲荷山が見え、その山肌の麓には神社の建物が見える。そして、何よりも、駅を降りると、すぐに伏見稲荷へ向かう参道が現れる。
「伏見稲荷ですね。多分、沢山の鳥居があるところと言えば、分かると思います。」
僕は皆に向かってそう言うと。
「「「ああっ。」」」
皆は声を揃えて頷いた。
「確か、夜もやっているので、ゆっくり回れるかなと。」
僕の言葉に、皆は頷く。
僕たちは、そのまま、大きな鳥居をくぐり、参道を抜ける。
「正面の鳥居も大きいわね。」
咲姉ちゃんがニコニコ笑う。
「本当ですね。」
樹里さんがうんうんと頷く。
「ふふふっ、お目当ての場所はまだまだ先かな~。」
あすかさんがニコニコ笑いながら、鳥居をくぐり、参道を駆け抜けていく。
参道を抜け、奥の鳥居をくぐり、更には、立派な神社の門である、楼門をくぐると、大きな建物が見える。
ここが本殿、ではなく、外拝殿という場所。そして、外拝殿の奥に、本殿が建っている。
本殿、外拝殿のどちらも、深紅に塗られた柱と立派な装飾がなされている。流石は伏見稲荷大社の本殿である。
「すごい。立派な建物。」
あすかさんが目を丸くする。
「本当ですね。これだけでも、満足した感じがあります。流石は、京都です。」
樹里さんも同じように目を丸くしている。
僕たちは本殿を見学した後、山の上へと目指していく。
「ふふふっ、ここからが本物よね。」
咲姉ちゃんは、ニコニコと笑って僕たちに声をかける。
そう、まさにその通り。京都の神社の本殿の豪華さに目を丸くしていては、これから映し出される光景はまさに圧巻だろう。ここは、伏見稲荷大社。この場所の見物は、何といっても、山の上へと続く、千本鳥居の道である。
すでにいくつかの鳥居が並んでいて、その鳥居の間隔が段々と狭くなってくる。
「すごい。」
樹里さんは目を丸くしながら、山へ続く、その鳥居の道を歩いていく。
そして、千本鳥居の入口へたどり着く。入り口は、左右に二つ。どちらを進んでも構わないが、ここは京都。やはり沢山の観光客が居るためか、自動的にどちらを選ぶかは、指定されていた。右側の入り口の方が奥へと向かう人の流れが多く、左側の入り口からは、こちらに向かって出てくる人が多かったので、ここは、人の流れに従って右側の千本鳥居から入る。
「すごい。千本鳥居。私が出てる雑誌でも紹介されてるし、よく写真で見るやつね。」
あすかさんが感激しながら、周りを見回す。これまで、写真でしか見たことの無い風景が実際に現れ、どこか嬉しさを爆発させている。
それは、樹里さんと咲姉ちゃんも同じで。
「すごい。私も、写真でしか見たことないので。」
樹里さんはニコニコ笑う。
「本当ね。こうして、実際に、写真と同じ場所があることが嬉しいわね。」
咲姉ちゃんもニコニコと笑っていた。
千本鳥居をゆっくりと潜り抜け、もう少し奥まで進もうという結論になる。
この伏見稲荷は本殿の後ろにある山全体が、その敷地であり、この場所を全て回ると、半日近く、時間を要する。
しかしながら、夕刻が迫るこの時間帯に、全ての敷地を回ることは流石に不可能のなので、ある程度山の中腹まで行ったら引き返すことにした。
山の上へ続く、参拝ルートは、先ほど度比べると、観光客の人数が少し減っているようで、のびのびと歩くことができる。
勿論、いくつもの鳥居が沢山立ち並び、その下を潜り抜けて、山を登っていく。
さすがに山を登っていくので。
「大丈夫ですか?」
と僕は、皆に声をかける。
「うん。何とか頑張れそう。」
咲姉ちゃんがうんうんと頷いてこちらに向かって笑顔を作る。
「私も、行けるよ。」
あすかさんも、それに負けじとついてきている。
「はあはあ、私は、少しきついかな。でも、大丈夫です。」
樹里さんは少しきつそうな表情をしているが、体力の限界というわけではなさそうだ。
しかしながら、今日は朝早く東京を出て来て、琵琶湖の湖水浴からの、この山登りの参拝ルート。やはり、疲れは出てきているようなので、樹里さんに合わせながらゆっくりと進む僕たち。
そうして、進んでいくと、新池と、熊鷹社と呼ばれる場所が見えてきた。
熊鷹社を少し見学し、新池のベンチで水分補給を済ませ、さらに上へと進む僕たち。
そうして、見えてきた場所は、四ツ辻と呼ばれる場所。そして、この場所で後ろを振り返る。
「うわ~。」
「綺麗!!」
「すごい。」
あすかさん、咲姉ちゃん、樹里さんが声をそろえて、思わずため息。
そう、この場所からは京都市内が一望できる。
丁度、夕日、黄昏時。沈みゆく夕日を背景に、京都市内の眺めを目に焼き付ける僕たち。
当然、僕と咲姉ちゃんはその風景をカメラに収める。
「ちょっと、きつかったけど、ここまで登って来てよかったです。」
樹里さんがニコニコと笑う。
「本当ね。よく頑張ったわね、樹里ちゃん。」
咲姉ちゃんがうんうんと頷く。
「すごい。私も来てよかった。」
あすかさんが、ニコニコと笑いながら、今日一日やり遂げたという顔をしている。
思い、思いに、京都市内の夕焼けを目に焼き付け、山を下りる僕たち。
下りは、上りよりも転びやすいので、怪我をしないように、転ばないように注意しつつ、鳥居の中の参道を降りていく。
そうして、伏見稲荷の山を下りて、駅に向かう頃には、すっかり日が暮れて、夜になっていた。
再び、奈良線に乗り、京都駅に戻る僕たち。
「ふうっ。楽しかったわね。」
咲姉ちゃんがニコニコと笑う。
「本当、外に居たので、電車のクーラーが気持ちいぃ。」
あすかさんがそう言って、両手を広げる。
「すごく良かったです。」
樹里さんも大満足の表情だ。
京都駅に戻った僕たちは、夕食を食べることに。
駅の自由通路を通り、京都駅の伊勢丹へ。この場所は、有名な京都駅の大階段の場所だ。
「すごい、見たことあります。アニメとか、イラストとか、写真で。」
再び目を丸くして驚く樹里さん。
「ふふふっ、そうね。いろいろ催し物をやっている場所ね。」
あすかさんがニコニコと笑っている。
「そうですね。この場所は、京都駅の中でもとくに有名な場所です。」
僕がうんうんと頷きながら、皆に説明する。
そうして、大階段の脇に設置されているエスカレーターを登り、レストランのフロアへ。
京都ならでは物を食べようということになり、鱧の天ぷらがトッピングされている、蕎麦を夕食として食べることになった。
早速、お目当ての食事が僕たちの前に運ばれてくる。
「すごい。和風って感じがします。」
樹里さんがうんうんと頷く。
「本当ね。盛り付けも奇麗だわ。」
咲姉ちゃんがニコニコと笑っている。
「美味しく食べましょう。こっちも、良く味わって食べたい気持ちになるから。」
あすかさんがうんうんと頷き笑っている。
そうして、料理を口に入れてみると、味もとにかく絶品だった。
サクサクとした揚げたての鱧の天ぷら。蕎麦のコシ。そして、ひんやり冷たさが、今日一日の夏の疲れを癒すようだった。
「美味しい。」
あすかさんが思わず、その言葉を口にする。
「はい。疲れが抜けて、元気が出ます。」
樹里さんがうんうんと笑っている。
「本当ね。京都に来てよかったわ。」
咲姉ちゃんもニコニコと笑っていた。
そうして、蕎麦を食べ終え、お店をあとにすると。
「もう一軒、お店に寄っちゃおうかな。」
咲姉ちゃんがニコニコと笑って、僕たちに提案する。
「そうだね。デザートは別腹だよね。」
あすかさんが、咲姉ちゃんの言葉の意味を理解したのか、ニコニコと笑って、親指を立てる。
樹里さんもデザートというワードに反応して、笑顔を見せる。
そうして、今度は、和風の内装を意識した、喫茶店へ。
あすかさんと樹里さんが、白玉のパフェ、僕と咲姉ちゃんが夏のフルーツのパフェ、をデザートとして注文。そして、全員胸痛で、付け合わせに、抹茶の飲み物を注文し、今日のデザートとする。
やはり、京都の店だろうか、運ばれて来たデザートは、上品に盛り付けられていた。
白玉とフルーツを少し分け合い、デザートのパフェを食べる僕たち。
「冷たくて、美味しい。」
咲姉ちゃんはニコニコと笑って、デザートを勢いよく食べ進める。
「本当ね。最高!!」
あすかさんもうんうんと頷き、笑っている。
「はい。京都に来てよかったです。白玉がモチモチしてて、最高です。」
樹里さんがニコニコ笑って、他のメンバーと同じように、勢いよく、デザートを食べていた。
僕も、ひんやりしたデザートの味が心に染みこみ、今日の疲れが、完全に癒えた。そんなひと時だった。
そうして、僕たちは、ホテルに戻り、各々、お風呂を済ませて、ベッドで横になり、すぐに寝息を立てて、眠るのだった。
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