ゲイのおタケさんと一緒に悪口軽口、罵詈雑言

則巻 アライ

第1話 わきが みみが へそが

おタケさんの店の中、何やら騒がしいな。

何やなんやぁ?


「自分の臭いが嫌すぎて。

 柿渋も炭も全部試しているんですけど、

 やっぱり体臭がする気がして。」

「考えすぎ。

 腋臭やなければ、そこまで臭わんって。」


自分の臭いがきになってんのは某メーカー勤めのサラリーマン。

30後半やから、真剣に婚活励みたいんやってさ。

婚活中、会う人会う人いつも2回目以降がなくて、それは自分の体臭のせいじゃないかと気に病んでいるようだ。

相手してんのは藤田さん(定年退職されている)。


おタケさんは

「男の汗臭さがいいって人もいるのよ。」

と言うけど、それはおタケさんがゲイだからやないか。私は遠慮しとく。


サラリーマンに

「どう思いますか?」

と聞かれたから、

「うーん、

 あんまり臭いに敏感なんじゃないですか?」

とだけ答えておいた。



 腋臭の人は、自分が腋臭だって気が付かない人もいるらしい。小さい頃からそういう臭いなら、それが当たり前と思っているから。


 周りの人も、この子腋臭やって思っても指摘しにくい。指摘して泣かれでもしたら、学生さんなら不登校になるかもしらん。



「私、耳臭と臍臭の患者も知ってる。」

と言ったら

「みみがとへそが!」

周りから驚かれた。


「そんなの聞いたことないわよ、

             アライちゃん。」

おタケさんに見つめられたけど、いや居るんだって。ちゃんと存在すんの。


 みみが。疾患名でいうと耳漏とかいうんだろうけど。耳の中が爛れてジュクジュク、茶色い汁がタラタラと流れてきて、その汁の臭いが何とも言えない臭い。


 腋臭がツーンと鼻につく臭いとしたら、みみがはズーンと鼻の奥に止まる臭いしている。


「じゃあ、臍がは?」とおタケさん。


「患者さんの臍のゴマの処理してて。

取っても取っても臍のゴマなくならないの。

どんだけ溜めてたんやって。」


私が説明すると、周りは笑い出した。


「開けーゴマ。」

茶化すおタケさん。

 

どうせためるなら、

臍のゴマやなくて金貯めたいわ。

 

臍がの患者の臍のゴマ

黒と灰色のカチカチで、オリーブオイルでふやかしても、ちいとも柔らかくならん。


無言でゴマほじくってたら、

患者が「痛い。もういいだろ。」


ティッシュの上のゴマからは、むわっとすえたような臭い。あんた、これ大事に持ってたんだよ。私が始末してあげたんやい、感謝せい!


おタケさんはケラケラ笑いながら

「アタシも臍のお手入れしなくちゃ。

     アライちゃんに怒られちゃうわ。」


サラリーマンは神妙な面持ちで

「僕も気をつけます。」やってさ。


タコの唐揚げ頼んだら

「ハイ、どーぞ。面白かったわよ。」

とおタケさん。

サービスで鶏の唐揚げ一個つけてくれた。

嬉しい。



いい香りなんだけど、香りが残りすぎて

逆に不快って場合もある。


抗がん剤の治療受けてる患者から

「看護師で香水つけてる人がいる!!」

と苦情がきた。

けれども、苦情のでた看護師さん。

香水なんてつけていなかった。


 香水やなくて服の柔軟剤の香りと判明して、主任が患者に謝罪と事情説明していた。


 今って、香水以外にも香りがつく物がやたらと溢れている。


 よい香りも香害で臭いのも香害って難しいな。臭いとるのと香りつけんのと、上手く足し引きせんならん。そういうこっちゃ。

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