第二十五話 かわいくて――ご・め・ん♡
失敗した。
失敗した失敗した失敗した――ってネタが古い掲示板のまとめサイトにあったので、その元ネタのアニメを見たら、すごく面白い作品だったなぁ。
なんて現実逃避をしても、俺は別の世界線に行くことはできないわけで。
「おいおい、オタクくん。そんなにわたしのことを『かわいい』って思ってたの? いつも冷たくしてたくせに、本当は照れてたってことかにゃ?」
くっ。バレた。
普段、すました顔をしている理由が、異性として意識しないようにした結果だということを、凛々子に感づかれてしまった。
「わたしがかわいいせいで、目もあんまり合わなかったのかぁ~。照れちゃうからでしょ?」
「……っ」
「わたしがかわいいせいで、スキンシップしたら変にビクッてしてたんだぁ。照れちゃうからだよね?」
「……!」
「わたしがかわいいせいで、オタクくんは……いっしょーけんめー、自分の気持ちを隠してたんだぁ。本当はずっと照れてたんだねぇ~」
ニヤニヤ。
ニヤニヤ。
ニヤニヤ。
イタズラっぽく笑って、凛々子は直立不動の俺をツンツンと突いている。
くそっ。分からせてやりたい……俺が薄い本にたくさん出てくる分からせおじさんなら、今すぐにでもこの小娘を分からせているところだ。しかし俺は薄い本で言うとNTRされるタイプの情けないもやし主人公。分からせることなんて無理だ。
「あ、大丈夫だよ。オタクくんが恥ずかしがることじゃないよ? だって、オタクくんは女の子に慣れてないし、どーてーだし、こうやって会話するだけでも大変なんだよね? しかも、相手がとんでもない美少女だから、気が抜けたらすぐに変になっちゃうもんね?」
うるせーぞ!
そんなわけないからな。お前みたいな地雷系、ちょっとかわいいって思っただけでそこまで照れないんだが?
……なんて言えたら、良かったのになぁ。
残念ながら、彼女の言うことは全部事実。むしろ俺は、なんでこいつが自分のことを『ブス』だと思い込んでいたのか理解ができない。
それくらい凛々子はかわいい。
メイクしている顔はもちろん、メイクしていない方も……たぶん、すっぴんの方が好きという男性も世の中には多くいると思う。そういう、純粋そうな美少女なのだ。
俺としては、そうだな。もちろんすっぴん――と、あとメイクした顔もかわいいと思う。まぁ、俺は評価できるような人間じゃないので、どちらにしてもかわいいという判断しかできないとも言える。
ともあれ、正直に言うと。
(凛々子って、俺が大好きなタイプの顔なんだよなぁ)
もちろん、顔だけで他者に恋愛感情を抱くことはない。しかし、外見だけで考えると、ちょっと目が合わせられない程度にはレベルが高いので、そのことに自覚がないとは夢にも思わなかった。
おかげで、凛々子に俺の本音がバレてしまったのである。
「オタクくん……そっか。うんうん、今まで我慢させてたんだね」
ニヤニヤしながら、凛々子は俺の肩を慣れ慣れしく叩いてきた。
今まで、スキンシップは俺が抵抗していたので、あまり触れてこなかったのに……実は嫌じゃないと確信をモテたから、遠慮がなくなったかもしれない。
俺の肩に手を置きながら、彼女はムカつく顔でこういった。
「かわいくて――ご・め・ん♡」
お前、まったく申し訳ないと思ってないだろ。
ごめん、と口にはしているが、凛々子は勝ち誇ったような表情を浮かべている。
……くそっ。やっぱり、悔しいよ。
(その顔すらかわいいのは、ずるいだろ……!)
意識したらもうダメだ。
凛々子がかわいすぎて、しばらくメンタルが落ち着かなかった――。
【あとがき】
お読みくださりありがとうございます!
もし続きが気になった方は、最新話からできる評価(☆☆☆)や感想などいただけると更新のモチベーションになります!
これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます