第十七話 地雷系女子とメンヘラは紙一重
今日は凛々子の機嫌が悪い。
まぁ、彼女が情緒不安定なのはいつものことなので慣れている。
体調が悪い、というよりは調子が悪い日らしい。
意外とすぐに立ち直る日もあれば、結構長引く日もあるのだが……今日はどうやら、長引いているようだ。
「…………」
夕方になっても、彼女はベッドでうつ伏せの状態である。顔も枕にうずめているのでまったく見えない。息苦しくないのだろうか。
……ん? ちょっと待て。
凛々子が先程から、微塵も動いていない気がする。
なんだか恐怖を感じてしまうほど、微動だにしていないのだ。
「凛々子?」
心配になって声をかけてみる。
しかし彼女からの返事はない……まるで屍のようだ。
「……し、死んでる?」
「ぴっぴ、今はその絡みめんどくさい」
「あ、うん、ごめん」
別にだる絡みしたかったわけじゃないのだが、言い返しても凛々子の機嫌が余計に悪くなるだけなので黙っておいた。
まぁ、生きているならそれでいいか。
「おーい、おっさん。ごはんまだー?」
『……太田君は凛々子君と違って、意外と元気だねぇ』
モニターに向かって声をかけると、即座に画面が切り替わった。相変わらず仮面とスーツがまったく似合わないおっさんだなぁ。
「まぁ、意外と頑丈ではあるか」
『オタクはもっと不健康だという印象があったよ』
「不健康でいられる家庭状況じゃなかったんだよ……親父がギャンブルばっかりしてるから、病院に行く金がなくてさ」
『君たちの身の上話はやめてくれないかな? 重たくてため息が出るんだ』
「でも、親父なりにいいところはあったぞ? ネットだけはずっと繋げていてくれたし、パソコンも貸してくれた。動画視聴サイトにも登録してくれたから、アニメだけは見放題だ。おかげでオタクになったよ」
『ほう。やはり親だね。優しいじゃないか』
「うん。優しいことがおかしいと思って、後々聞いてみたらネットで競艇とか競馬をやるためだったけど。動画視聴サイトは……スケベな動画を見るためだったらしい。アニメも見られるサービスで良かったよ、本当に」
『あー、やっぱりやめよう。君たちの親はあまりにもカスすぎる』
俺と凛々子を強制的にここに連れてきた以上、おっさんもまともな人間ではないのだが。
しかし、俺と凛々子の親と比べたら間違いなく善人なので、嫌いになれなかった。俺たちの親が異常すぎるとも言えるが、それはさておき。
「…………」
いつもなら、凛々子も便乗して不幸自慢をしてくるところだが。
今日はかなり調子が悪いようで、無言で寝たままだ。自律神経がやられてるなぁ……こういう部分も、部屋に閉じ込められている弊害ではあるだろう。
意外と俺が元気なのが不思議である。親父が有り得ないくらい頑丈だったから、その遺伝かもしれない。
「なぁ、一時的にでいいから凛々子は外に出した方が良くないか?」
俺たちは今、軟禁状態にある。
外出できないので、精神的なストレスはやはりある。俺は元々インドア派の引きこもりだし、友達もいなかった。一人で過ごすことに慣れているので大丈夫なのだが。
凛々子は地雷系女子と呼ばれるタイプの人間だ。友達も多かったらしいし、俺とは違って外でずっと遊んでいたらしい。彼女からすると、この生活は結構苦しいだろう。
「少しでもいいよ。ほら、監視とかつけて逃げられないようにすればいいんじゃないか? 凛々子も逃げる気はないだろうし……何か手を打たないと、凛々子がメンヘラになっちゃうぞ」
地雷系女子とメンヘラは紙一重である。
というか、俺は凛々子と出会うまでほぼ同一視していた。彼女と接してその偏見はなくなったが、近縁種であることは間違いない。
彼女のメンタルが壊れて、メンヘラになる前に。
何かしらの対策を売った方がいい気がするのだが――。
【あとがき】
お読みくださりありがとうございます!
もし続きが気になった方は、最新話からできる評価(☆☆☆)や感想などいただけると更新のモチベーションになります!
これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます