葉山、美女2人に挟まれる。

 吐息まじりに囁いて、少し照れたような顔をするその人は、やはり何も着ていなさそうである。

 

 そして俺はシャツとパンツ姿。


 ベッドの下に目をやると、俺が脱ぎ捨てた軍服の横に、なぜかメイド服っぽい服……と、ランジェリーらしきものが脱ぎ捨てられている。


「…………」


 い、いやいやいやいや……

 ま、まままままさかね……

 

 昨日は、もう疲れたーって服脱いで、このベッドにダイブして、即寝だった。うん、何もやましいことはしていないはずだ。


「ハヤマさま……」


 俺が必死に記憶を遡っていると、その美女が胸元でシーツをキュッと握りながら、体を起こした。


 首から腰にかけ、ゆるやかにカーブを描く背中のラインが見えてしまった。


「あ、あの……」


「ハヤマさま、とっても素敵な夜でしたね」


 その人は俺のすぐ隣に座った。そして恥じらいがちに微笑んだ。


 ……


 ……おい。


 おい、俺。

 

 何もやましいことはしてないよな?


 してないよな??


「あ……ははは。気のせいじゃないでしょうか」


「でも私のこと、『ナミより胸が大きいね』って、言ってくれました」


「俺ーーーー!!!!」


 俺は頭を抱えて絶叫した。


 まさか俺、無意識のうちに……う、うわあhris7:.&8@!?


「……朝からうるさいわよ、ハヤマ」


 ふと、戸口から聞き慣れた声がした。


 泣きそうになりながら振り返ると、部屋の入り口にいつもの軍服姿の……呆れた顔をしたレーナさんが立っていた。


「れ、レーナさん……! 俺……!」


「シルフィとはなんにもないわよ。その人、ついさっき〈拠点〉に戻ってきたんだから」


 うぉおおおい! よかった! 

 奈美に顔向けできなくなるところだった!


 俺は全身でガッツポーズをした。


「ちょっとレーナ、言わないでよ」


 隣の赤髪美女(シルフィさんと言うらしい)が、バツが悪そうに赤い唇を尖らせる。それもまた魅力的というか、いや違う違う俺は流されてなんかいません。


「えっと……じゃあなんでここに寝てるんです?」


 シルフィさんはますますムッとして、頬を膨らませた。そしてシーツ1枚だけをまとった姿で、俺にグイッと寄ってきた。


「ちょっ、うわっ」


「まったく、レーナったら本当に空気が読めないんだから……これからいいことしようって時にねぇ。ね、ハヤマさま?」


「い、いや、それより服着てください」


 目のやり場に困っていると、シルフィさんはフフッと微笑んで、俺の上に跨り乗ってきた。


「ちょっ……!」


 シーツ越しにつたわる、柔らかい質感。生々しい温度。ていうか、色々見えそう。


 これは……やばい!


「シルフィ! もう、ハヤマから離れなさいよ!」


 見かねたレーナさんが近寄ってきたが、シルフィさんは魅惑的な体を俺に押し付けながら、にっこり微笑んだ。


「ハヤマさま、私ハヤマさまの専属メイドとなりました。私のことはシルフィとお呼びください」


「え?! メイド?!」


 この美女が噂の?! メイドさん?!

 専属メイド!!


「いつでもなんでも、ご命令くださいね」


「いつでもなんでも……!」


 セクシー美女の、意味深な言葉。

 思わず、ゴクリ。


「はい。なんでも。シルフィはハヤマさまに従います」


 ゴクリ、ゴクリ。

 押し付けられる谷間、ゴクリ。


「……な、なんでも……」


「ハヤマ!! シルフィに流されちゃダメ!! 見ちゃダメ!!」


「わっ!」


 いつのまにかレーナさんがすぐそばにいて、後ろから俺の目を両手で塞いできた。


 ……んだけど。


 ちょっと待て。この後頭部にあたる柔らかい感触は……?! あーららららー!!


「レ、レーナさん……ッ」


 ……視界が奪われた分、全身が敏感になっているような気がする。


 頭にはレーナさんのお胸が。

 体の上ではシルフィさんが、艶かしく腰をくねらせてる。


「ハヤマさま……これからいっぱい、可愛がってくださいね」


「シルフィ、あんまりハヤマをからかわないで」


「あら、からかってなんかないわ。ただ親睦を深めたいだけよ」


「とりあえず服を着なさいよ」


「えー? いやよ。メイド服って窮屈なんだもーん。特に胸が」


「バカじゃないの」


 ――美女2人が、俺を挟んで言い争いをしています。


「……あら? ふふ、ハヤマさんったら、お元気ね」

 

 シルフィさんが、意識したくない場所に、さらにくねくね押し付けてきた。


「ハヤマ……! あなたねぇ!」


 背後からレーナさんの圧が強まるのを感じます。


「ご、ごごごごめんなさい!!」


 でもこれは、しょうがないんです!


 走れば汗をかく、昼飯食ったら眠くなる。


 これはそれと同じ類いのアレなんです!


「かわいい……ハヤマさま」


 吐息混じりの声が、耳元で響く……。

 

 …………



 俺は――。

 今の俺にできることは――。




「…………奈美ーー!! 助けてー!!」


 恋人に助けを求める俺は、そう、救世主――!

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