鳳仙花

リーン……


風が運ぶ鈴の音


夕焼けが落ちる空に


かなしみ一つ


心を湿らせて



わたしのことなど何も知らない


そんな橙が辺りを照らす


あなたはひとり


針が止まったまま


影の音が重なる


すすきがたなびく


今は白の季節



知らない なにも


知らない なにも


知らない


知らない


しら…な…い


あなたが侵されていたことなど


しらない


しらない


しらなくて、いい


わたしはしらなくていい


知らなくて……




ざわりと

鳳仙花が鳴いた



火が空に流れる



燃えている


いたみが


くるしみが


そうやって 燃やして


送って


降り積った灰の上で


動けなくなっている


リーン……


足もとの金属片と


群青に落ちていく

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