故郷への帰還金
ローズ・バルボラはエルドラド大陸の開拓民として、異世界から誘拐されてきた少年だった。
元の世界に帰りたければしっかり働けと言われた彼は、しぶしぶ開拓の仕事を手伝っていた。
他の開拓民達と一緒に芝土の家をこしらえ、そこで共同生活を送る。開拓がそれなりに進み、丸太小屋を作り始めた頃、彼は開拓仕事を続ける気が萎えていた。
「この調子じゃ、家に帰る頃にはジジイになっちゃうよ!」
彼は自分をエルドラドに連れてきた犯罪組織が「故郷への帰還金」として要求してきた金を稼ぐには、途方もない時間を要する事に気づいていた。
開拓民のままだと時間がかかりすぎる。下手したら一生かかっても帰還金を用意できない。
現状を打破する方法を考えていた彼は、たまたま村に立ち寄った冒険者達の羽振りの良さに惹かれ、彼らに同行させてほしいと求めた。
「おれも、冒険者にしてくださいっ!」
冒険者になって迷宮に潜り、ドカンと稼ぐ。
冒険者になって稼いだ金で故郷に帰ろう。
彼はそんな考えを抱いて冒険者となり、再び失望する事となった。
当時のローズはまだ少年だった。
魔物との戦闘をこなせるほど、屈強な身体は持っていなかった。
幸い、彼を同行させてくれた冒険者達は、彼を囮として使ったりはしなかった。
冒険者の多くはならず者であり、冒険者稼業に夢を見てついてきた少年少女を使い捨てるのは珍しくなかった。
囮として使いはしなかったものの、ローズは雑用係として酷使された。
大人達の身の回りの世話をさせられ、寝ずに見張り番をさせられる日々。
自分の体重よりずっと重い荷物を持たされ、ふらついて落とそうものなら殴られる。何も悪い事をしていなくても、大人達の機嫌次第で殴られる。
魔物と戦わずに済んでいても、生傷の絶えない日々を送っていた。
「村から出てくるんじゃなかった……」
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