第22話「笑顔と料理のエンカウント」

システィが前に出て赤い着物の女性に接触する。




「ごめんなさい。こそこそしちゃって。今、少し時間もらえるかしら?」




システィが頭を低く丁寧に挨拶を交わす。


挨拶もそこそこに済ませる椿はその場にいたいぬおに声をかける。




「いいぜ。いぬお、キリもいいし、ここまでにしようぜ。」




「ありがとう!椿。」




「2人は何をしていたの?」




「あぁ…こいつが俺に稽古つけてほしいって言うから手合わせしてたんだ軽くな。」




椿は見るからに強者のオーラがでている。一方いぬおは控えめ。




「なるほど」




「立ち話もなんだしとりあえず入れよ」




「何となく用事は察するけど。」




いぬおが苦笑しシスティとツキノの方へ視線を送る。 


二人の快い歓迎でログハウスへ。




「お邪魔します。」




2人が案内されたのはリビング。


木で作られたテーブルとウッドソファが配置されている。


2人はゆっくりとその場に着席すると同時にいぬおが飲み物を運んできて並べてくれる。




「ここじゃ見ない顔だけど…何しに来たんだ?」




何気なく振られる会話に、緊張するシスティ。


それをカバーするようにツキノが返答する。




「ぼ、ボクたち、人探ししてて、あの、その!黒上いぬこさんって…言う。」




そうまさにその言葉を口にした瞬間だった。


ログハウスにいた一同が何かを察したようにこちらを凝視する。




「あー…………。お前らもか。」




「お前らも???」




「あ、あの…も、もしかして…いたりします?…そ、そんなわけ…。」




数分後…


テーブルを囲み一同が対面するような形での顔合わせ。


対面する2人の目にはたった1人に視線が集中。


綺麗な黒髪に金色の瞳、トランプで言うダイヤの形をした金色の髪飾り、獣耳にも金色ピアスが2つ。


黒くフサフサな尻尾の優しそうな女性。



「えと…あんまりまじまじと見られると恥ずかしいんだけど…話をしていいかな?」




耳をぺたんとして少し困った様子でいぬこは話す。


反射的にシスティもツキノも謝罪し会話を続行。




「ご!ごめんなさい!」




「いいよ。こっちこそごめんね…なんか色々と。改めて…初めまして私が黒上いぬこだよ。私を探してたってことは…リューコと椿と同じ感じかな?」




「あ、えっと…その…」




「じれったいわね。アタシがリューコでこの赤い着物着たやつが椿、いぬこの隣にいるのがいぬおよ。これでわかるでしょ?」


おどおどとしていたのが気に障ったのかリューコは雑に自己紹介を始めた。

それに対してシスティとツキノは申し訳なさそうに返答を返す。


「あ、ありがとうございます。リューコさん」


「リューコでいいわよ…べつに。」


「まぁまぁ…リューコ落ち着いて。」


先走ったリューコを宥めるようにいぬこが割って入る。


「リューコは至って普通よ!怒ってなんかないわよ。」


「わかってるよ。でも、初めて会う人なんだから緊張するのもわかるでしょ?」


「……………。そうね…。ごめんなさい。私が悪かったわ…。2人ともごめんなさい。」


「いやいや!はっきりとしない私達にも非があったわけだからそんな…大丈夫ですよ!」


「そうです!そうです!」


「…ありがとう。」


互いに少し打ち解け。

会話の続きをしようとした時。

パンっ!と手をたたくいぬこ。

全員の視線を集め話をする。


「よし!じゃあ!ご飯を食べよう!」


場の空気を和ませるためいぬこはツキノ、システィも含め仲良く食事を提案する。

遠慮する2人だったがいぬこに押し切られてしまい、出される料理をすべてたいらげた。








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