5.※姫宮(受け)視点


ここに一箱の段ボールがある。

それは姫宮宛てに送られてきた荷物であり、御月堂の服がたんまりと入っていた。


まず最初に開けたのは、安野だった。

荷物を引き取りに行ったのが彼女だから、というのではなく、姫宮宛てとはいえ、姫宮にとって脅威になるものかもしれないと、それ以前に自分宛てに自分が届くとは思ってないからだ。

いくら御月堂からとはいえ、それを騙った詐欺かもしれない。

だから、彼女に開けてもらったが、開けた瞬間漂ってきたのは花のように甘い匂い。

それはついこないだまで嗅いでいた御月堂の匂いだった。


「なんでしょうね、これ」

「間違いなんじゃないですか?」

「あ、でもこの手紙に『愛賀、私なりの愛を受け取ってくれ。御月堂』と書いてありますよ」

「きゃっ、御月堂様もそのようなことを仰るだなんて」


安野達が話が盛り上がっている中、姫宮は咄嗟に鼻を覆った。


この匂いを嗅いでしまったら、呼び起こされてしまいそう。

でも終わったばかりだから、多分大丈夫なはず。

それにその匂いが欲しいと思っていた。


「姫宮様? どうされました?」

「⋯⋯あ、いえ、慶様の匂いを嗅いだら、ちょっと刺激が⋯⋯」

「刺激?」

「何か強い臭いがしましたか?私には分かりかねませんでしたが⋯⋯」

「あ、それとも加齢臭?」

「ちょっと、小口⋯⋯! 御月堂様の年齢でそれはさすがに失礼でしょ!」

「あるかもしれないですよ〜? ねぇ、大河さま?」


いつの間にか大河までもが参加し、小口に同意を求められた大河は首を傾げていたもののややあって頷いた。

恐らく加齢臭のことは分からないけど、快く思ってない御月堂の悪い部分だからという理由で頷いたのだろう。


御月堂に好意を抱いているのは姫宮だけの勝手ではあるが、けれどもそこまで悪く思わないで欲しいとは思う。

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