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ありがとうございます。特に問題はないと思うので、次の「3.3 決定的な誤解と、すれ違う二人 (ライル視点)」の執筆をお願いします。
承知いたしました。
それでは、第三章の核心部分、「3.3 決定的な誤解と、すれ違う二人 (ライル視点)」を執筆します。ライルがアルカディアへティアを訪ね、そこで目撃してしまう決定的な場面と、彼の心を深く支配する誤解、そして絶望的な自己完結を描写します。読者の胸を締め付ける、まさに「すれ違い」の真骨頂となるよう努めます。
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### **『天空の君に、届かぬ翼』**
**第三章:すれ違う心と、交錯する想い**
**3.3 決定的な誤解と、すれ違う二人 (ライル視点)**
故郷の浮島で修行に励む日々は、焦燥と不安に塗り固められていた。ティアからの手紙を読むたび、俺の心は千々に乱れる。ゼフィールという男の影が、彼女の言葉の端々からちらつくたび、俺は言いようのない劣等感と、彼女を失う恐怖に苛まれた。だが、このまま黙って見ていることなど、俺にはできなかった。胸の奥で燻り続ける「ティアに会いたい」という衝動が、ついに俺を突き動かした。
誰にも告げず、俺はアルカディアへと旅立った。不器用な俺には、ティアに会うための、これ以外の方法が思いつかなかったのだ。風の道は不安定で、空の海には魔物も棲む。危険な旅路だったが、ティアへの一心な想いが、俺の疲れた体に鞭打った。
数日をかけ、ようやくアルカディアの地を踏んだ。見上げるほど高くそびえる神殿。故郷の浮島とは比べ物にならない、壮麗な建物の数々に圧倒される。だが、そんなものには目もくれず、俺は神殿へと続く道を急いだ。早くティアに会って、伝えたい。まだ間に合うはずだ。この手で、ティアを……。
神殿の庭園は、色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りが漂っていた。その中に、白い聖女の衣を纏ったティアの姿を見つけた。陽の光を受けて、金色の髪がまばゆく輝いている。故郷にいた頃よりも、彼女は遥かに美しく、そして、遠い存在になってしまったように見えた。
だが、彼女は一人ではなかった。その隣には、紛れもなく、あのゼフィールという男がいた。二人は親密な様子で、向かい合って何かを語り合っている。俺の足が、その場で縫い付けられたように動かなくなった。
「ティア殿、私は……君を愛している。君を、誰よりも幸せにしたい」
風が、彼の声を運んできた。甘く、はっきりと、俺の耳に届いた。そして、彼は、ティアの手を取り、真剣な眼差しで見つめている。その瞬間、俺の視界は、ぐにゃりと歪んだ。全身から血の気が引いていくのが分かった。心臓が、まるで誰かに握り潰されたかのように、激しく痛んだ。
「……っ!」
ティアは動揺しているように見えた。顔が赤く染まり、視線が揺れている。だが、彼の言葉を明確に拒絶する様子はない。俺の胸に、巨大な絶望が突き刺さった。
「そうか……そうだよな」
俺は、全てを理解したつもりになった。ティアはもう、俺を必要としていない。俺の不器用さが、言葉の足りなさが、彼女を遠ざけていた。ゼフィールの方が、ティアを幸せにできる。彼の隣にいる方が、彼女はきっと輝ける。言葉にできない俺の隣にいるよりも、ゼフィールの流暢な言葉に包まれる方が、ティアはきっと幸せになれる。俺は、そう自己完結した。それが、彼女への、俺にできる唯一の優しさだと、そう思い込もうとした。
これ以上、この場にいることはできなかった。ティアの幸せを願うなら、俺は、ここで引くべきだ。彼女の視界に、俺という存在が入るべきではない。そうすれば、ティアは迷うことなく、ゼフィールの手を取れるはずだ。
ティアに声をかけることなく、俺は踵を返した。引き返す足取りは、鉛のように重かった。一歩踏み出すたびに、胸の奥が、軋むような音を立てて痛んだ。
「俺は、ティアの隣にいる資格なんてない」
冷たい風が、俺の頬を伝うものを乾かしていく。それが、涙だったのか、それとも、ただの汗だったのか。もう、どうでもよかった。俺の「世界」は、完全に色を失い、深い絶望の淵に沈んでいった。
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いかがでしたでしょうか。
ライルがゼフィールの告白を目撃し、その誤解が彼の心をどれほど深く傷つけ、自己完結へと追い込んでいくかを、彼の視点から感情豊かに描写しました。このシーンが、彼の抱えるBSS感情の頂点となるよう意識しました。
この部分で問題なければ、第三章の最後の部分「3.4 諦めと、残る一縷の希望 (ティア視点)」の執筆に移らせていただきます。
ご意見や修正点などございましたら、遠慮なくお申し付けください。
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