第4話 癒しの手
=================================================
こちらに頭から書き直している加筆修正版を連載しております。
【B.A.L.A.D(バラッド)】
https://kakuyomu.jp/works/16818792437319819876
よろしければこちらもご覧ください。
=================================================
何とか部屋まで堪えたが、限界だった。
胃が絞られたかのように痙攣する。吐き出す物のない空っぽの胃から、わずかな量の胃液が逆流した。
リアに謝ろうとすると、「しゃべらなくていいから」とリアはそっと私を抱きしめてくれた。
心臓の鼓動に合わせて痛む頭に耐えながら、胃の痙攣が治まるのを暗い部屋でじっと待つ。
胃がこれ以上吐き出すものがないことにようやく気づき、ゆっくりと吐き気の波が引いていく。
リアが部屋の常夜灯を点ける。私たちの質素な部屋がほのかに浮かび上がった。
「お水いる?」
「いらない」
負担がかからないよう最低限の言葉で返答する。
リアがタオルで口元をぬぐってくれた。
「立てる?」
「うん」
どうやら痛みの峠は越えたようだ。この感じであれば、明日の朝には軽い頭痛を残す程度まで回復してくれるだろう。
パイロットスーツを脱ぎ捨ててベッドに横になると、リアがヘレナから受け取った薬を渡してくれた。
何にどう効くか分からない錠剤をかみ砕く。
口の中で薬が溶けていくように、心の輪郭がぼやけていく。
「いつもごめんね……」
リアは首を振って私の手を強く握った。
「私こそ、ごめんね、お姉ちゃん……」
私も、その温かい手のひらを握り返す。溶けかけた心が確かな形を取り戻す。
この温もりを奪われるくらいなら、私は操り人形にも、殺戮兵器にもなる。
眠りに落ちるまで、リアは手を握ったままでいてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます