第十七章 夜明けの秘密

キスが終わると、二人は数秒間沈黙し、ただ微笑み合った。


突然、背後から二つの声が響いた。

「やっぱり!」舞キロと綾瀬は同時に叫び、笑いながら手を叩いた。


ゆめは顔を真っ赤にして、二人を見るのが辛かった。樹も恥ずかしかったが、なんとか隠そうとした。彼は友人たちに近づき、真剣な顔で言った。

「これは二人だけの秘密だよな?」


二人は意味ありげな笑みを浮かべながら頷いた。


皆で公園近くのテーブルに座り、アイスクリームを食べた。


「もう、宮崎、まさかこんなこと隠すなんて!」舞キロは大げさに悲しそうに言った。「こんなに心が傷つくなんて…」


彼は想像上の涙を拭うふりさえした。


「どういう意味?」樹は信じられないといった様子で答えた。 「今日付き合い始めたばかりなのに!話す暇もなかったよ。」


「あら、でも騙されないで!」舞城は笑いながら言い返した。「君たちって昔から知り合いだし、彼女が下の名前で呼ぶんだから。偶然じゃないわよ。」


「私…いつもそう呼んでるから…」夢は説明しようとしたが、さらに顔を赤らめた。


綾瀬は好奇心からその機会を捉えた。

「ところで、君たちどうやって出会ったの?」


「彼女の誕生日パーティーよ。暇だったからちょっと覗いてみようと思って」と樹は言った。


「本当?どこでパーティーだったの?」綾瀬は驚いて尋ねた。


「彼女の家で」樹は少しぎこちなく答えた。


二人は目を見開いた。

「え…あなたの家で!?」綾瀬は椅子から飛び上がりそうになった。


夢は緊張して咳をした。

「あ、はい…」


あやせは、まるで刺されたかのように胸を叩いた。

「二人はただの友達だと思っていたのに…」


「あ、違うのよ!」ゆめは必死に答えた。


樹は既に顔を赤らめ、ため息をついた。「勘違いしてるわ…」


結局、4人は一緒に笑い、アイスクリームを食べ終わるまで軽快な会話が続いた。そしてすぐに別れを告げ、それぞれ別の道を歩いた。



---


帰り道


樹とゆめは並んで歩いた。まだ顔を赤らめていたゆめに、その場の雰囲気を和らげようと樹が話しかけた。

「それで…元気?」


「あ、はい…大丈夫です」とゆめは照れくさそうに答えた。


「コンテストは来週なのよ」


「あ、はい…」


「私たちのクラスが優勝するって、間違いないわ」樹は自信たっぷりに微笑んだ。


ゆめは小さく笑った。

「うちのクラスはいい子だけど、向こうのクラスにも才能のある子がいるってことを忘れちゃいけないわ。」


「人数なんて関係ない。誰も私たちの意志を超えることはできない。」彼は愛情を込めて彼女の頭に触れた。「それに、君はそのためにこんなに頑張ってきたんだ。無駄にはさせない。」


ゆめの心臓は高鳴った。彼は勇気を振り絞って提案した。

「もし…もし僕たちが勝ったら…デートしない?」


樹は驚き、少し間を置いてから、興奮したように微笑んだ。

「わかった!実現できるように頑張るよ。」


ゆめは髪をいじりながら笑い、彼の手を取った。二人は笑顔で一緒に歩いた。



---


翌朝


樹は早起きして、ゆめのためにボリュームたっぷりの朝食を用意した。トレイに料理を並べながら、ふと子供の頃、母親が朝食を持ってきてくれたことを思い出した。彼は心の中で微笑んだ。


しかし寝室のドアに着いた途端、彼の脳裏に声が響いた。

「気を散らすなと言っただろう…俺に逆らったらどうなるか、見せてやる。」


樹は目を閉じ、深呼吸をし、頭を振って思考を整理した。そしてドアを開けた。


ユメは静かに眠っていた。彼は数秒間、ただ彼女を観察していた。

「君は本当に…特別なんだ」と彼は呟いた。


彼はドレッサーの上にメモを添えたトレイを置き、静かに立ち去った。


しばらくして、ユメが目を覚ました。朝食を見ると、彼女の目は輝いた。彼女はメモを拾い上げ、読んだ。

「朝食を楽しんで。散歩に行ってきた。すぐ戻る。」


彼女は胸に手を当て、軽く微笑むと、静かにそれを全部平らげた。


樹は家を出て市場に立ち寄った。帰り道、草薙が腕を組み、挑発的な笑みを浮かべて道の真ん中に立っているのを見つけた。


「本当に時間を無駄にしない人だね」と彼は嘲るように言った。


「そんなに早く邪魔するなよ…」と樹は苛立ちながら答えた。


草薙は一歩前に出て、じっと見つめた。


「どこか話でもしようか?」


樹は目を細めた。

「頭でも打ったのか?本当に俺と一緒にどこかへ行くと思ってるのか?」


草薙は笑ったが、その視線には何か暗いものが宿っていた。

「他に選択肢はない。俺と一緒に来るか…さもなくば、全てここで終わる。」


空気が重苦しくなった。樹は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。まるで何か悪いことが起こりそうな予感がした。


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