この空の向こうに、希望はある 〜終末世界からの再生記〜

ゲンタ

第1話 プロローグ

大地震が起こった。


未曽有の激震が、すべてを呑み込んでいった。


俺、一ノ瀬悠人(いちのせ ゆうと)は、地方自治体の職員として、避難所の運営に携わっていた。

当時の俺は、これまでと同じように、いずれは政府の支援が届き、時間がかかっても元の生活に戻れる――そう信じていた。


日本は災害大国だ。

東日本大震災も、阪神淡路大震災も、痛みと苦しみを抱えながらも、人々は立ち上がってきた。

今回も、きっとそうなる。そう、思っていた。


……だが、今回は違った。


待っても、願っても、何も変わらない。

支援物資は来ず、行政からの連絡も途絶え、情報も希望も消えていった。

最初は静かだった。だが、静寂の裏には不安が渦巻いていた。


やがて、それは牙を剥いた。


食料をめぐる争い。

水の配給所で起きる殴り合い。

盗み。暴力。そして殺し合い。


人は極限状況に追い込まれると、こんなにも容易く獣になるのか――

その光景を、俺は毎日目の前で見ていた。


それでも、俺は信じていた。いつか状況は好転すると。政府が何とかしてくれるはずだ。だが、現実は非情だった。


追い討ちをかけるように、それは現れた。

あれは――人ではなかった。

黒い影。巨大な牙。炎を吐き、空を裂き、街を踏み潰す、"化け物"。

それが現れてから、人類の希望は完全に潰えた。


人々は次々と死んでいった。

文明は崩壊した。

俺は――家族を守るために、必死で戦った。


だが、力及ばず、死んだ。


最期に見たのは、崩れゆく避難所と、空を覆い尽くす火山灰。

最愛の妻・紗季(さき)と、幼い娘・望(のぞみ)はどうなった……生き延びることはできたのだろうか?


もう動けない……ごめんな。

俺は、守れなかった。


……もし、もう一度生まれ変われるのなら。

ただ家族を心配しながら、生きるだけじゃなく、愛する人を救えるような、そんな男になりたい。

あの時の後悔を、もう二度と繰り返したくない。


そう強く、強く願った。


何もない空間に、俺はいた。

光も、音も、時間さえも感じられない、ただの「無」。


その中で、声が聞こえた。

「お前の努力で――人類の未来を変えてみるがいい」


次の瞬間、俺は目を開けた。

目の前に見えたのは、病院の天井。そして、小さな手。


泣いていたのは――俺か。


転生なんて、物語の中の出来事だと思っていた。

けれど俺は今、確かに「もう一度生まれ直した」んだ。


今度こそ、守る。

愛する人も、仲間も、未来も。


この手で、全てを変えてみせる。


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