俺様ヤンキー サンタになって、ガキにプレゼントくれてやる話

冬野トモ

一箱目 ぬいぐるみの扱いが雑カミなのよ

一章 俺はクリスマスが嫌いだ

 俺はクリスマスが嫌いだ。

 浮ついた雰囲気にヘドが出る。

 ガキも大嫌いだ。

 ヤツらは、俺の顔見てピイピイ泣くし。

 どく柄のネクタイが怖いんだとよ。

 知るか。俺のアイデンティティーを汚すんじゃねえ。





「あー、はいはい。ガキとクリスマスが嫌いな、ヤンキーサンタさん。出番ですよ」


 ベレー帽の少女がクスリと笑った。


 派手なネクタイ、似合わないサングラス、両耳ピアス。

 ぼっさぼさの髪をした高校生、さき えん

 いかつい特攻とっこう服の上に、愛らしいサンタ帽とサンタコートを無理やり着せられ、彼は耳の端まで真っ赤にしていた。


「胴回りから袖丈そでたけまで、はたまたチャームポイントの白髭しろひげまで、しっかり採寸してぴったりサイズに作ったんだから。『意外とカッコイイじゃねーか』って言ってたのは、どこの誰だったかしら?」


「ばっ! カ、カッコイイなんて言ってねーし。全然だし。付けひげなんてダサすぎて、戦闘のときしか着けらんねーし!」


 彼女の隣で、ベアっぽいぬいぐるみがあおり立てる。


「嫌なら長老様に頼むことカミ。僕ちゃん赤帽子に赤服だと、力の半分しか出ないですう。敵にやられちゃうんですうって。あらあら、それはいけないカミねえ。おはぎマン、おニューの顔よってばかりに、きっとちゅう病全開の〝カッコイイ〟コスチュームをこしらえてもらえるカミから。デュフフフ」


 えんはぬいぐるみを思いっ切りった。


「痛いカミ!」


「テメーら全員、後でブン殴ってやるからな。楽しみに待ってろよ」


 彼は口から蒸気を噴射ふんしゃし、関節をポキポキと鳴らすのだった。





「いつまでしゃべっている!」


 ガルヴァニクスの鉄槌てっついが、空を裂くように振り下ろされた。

 えんの全身に雷撃らいげきが襲う。

 重力が倍増したように体が沈み込み、視界が揺らいだ。


「どいつもこいつも、俺の邪魔ばっかりしやがって……」


 えんは奥歯をみしめた。

 ありったけの力で武器を握り、即座にちょうやく


「クリスマスのバカ野郎おー!」


 抜群の運動神経と、柔軟なたいから繰り出される強烈な一撃。

 竹刀しないは虹のオーラをまといながら、モンスター・ガルヴァニクスを頭頂から真っ二つに切り裂くのだった。


 敵は崩れ落ち、光と轟音ごうおんを伴ってはじけ飛ぶ。


「ったく」


 炎は竹刀を小気味こぎみよく回転させると、腰の位置に戻した。


 ドミノのように次々と消失していくのは、空間くうかんを構成する幾何学模様。現実世界のビルや道路が、輪郭を取り戻していくのが分かる。





 えんは静かに窓を開けた。

 ベッドで眠る女児の姿を、月が優しく照らしている。


 彼は肩に担いだ袋からラッピングされた小箱を取り出し、ベッドサイドにそっと置いた。


「ほらよ、欲しがってたドールハウスだ」


「お疲れ様」「任務完了カミね」


 えんは額の汗をぬぐうと、切れ長の双眸そうぼうをベレー帽に向ける。


「間違うんじゃねぇ。俺はガキにもクリスマスにも興味ゼロだ。一カ月。一カ月だけだからな。お前らサンタに肩貸すのはよ」


「『利害のために共闘する』だったわね?」


「言い方は何でもいいんだよ! どっちにしろ、すべてが終わった後で、俺との約束しっかり果たしてもらうからな。忘れんじゃねえぞ!」

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