第30話

 前髪の下から細い目がじっくりこちらをにらんでいた。


「課長さん、なんです」


「覚えてない!本当です」


 女は啜るようにカップを口につけた。


「従兄弟ですの」


「従兄弟って、彼女がですか!」


「今頃、田舎に帰ってますわ」


「だから、だから!違うんです。覚えてない、信じてください!」


「奥様は信じるかしら」


 血の気が失せた。


「同じもの、届けました、ご自宅に」


 身体が動かなかった。時間も止まっていた。


 女は立ち上がって、会釈した。一郎はうつむいたままだった。


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