第12話

 通常より1時間も早く出勤しなければならなかった。

 

これまでにない朝のあわただしさに、麗美はすぐ何かを悟ったようだったであえて一郎を止めようとしなかった。


「社長が死んだらしい。今、専務から連絡があって…喪服とってくる」

 

麗美は頷き、朝食の用意に台所へ向かった。


「あ、いいよ、時間ないから」


「目玉焼きくらいは食べてよ」


「…そうだね、そうする」



 会社につくとすぐに専務の呼び出しを受け、事件の詳細を聞くに至った。


「購入部の奴ら、でっかい損失を隠蔽していたんだよ。社長まで咬んで!あろうことかその損失が公になる前に、家族、使って空売りかけてたんだよ、社長が自社に空売りかけるって。インサイダーでばれるに決まってるじゃないか」


 昨日、蕎麦を、ズルズル、3人そろって、食べたばかりなのに。


「専務、申し訳ありません…私には…事情が…いかようにしたらよろしいでしょうか…」


 憤りが止まらず、生まれ故郷の抑揚に変わっていく。


「狸じじいが聞いてあきれるよ、死ぬなら勝手に死ねや、なんで会社まで道ずれにするかぁ!…ババやろ…ババを引いたんじゃ、畜生!」


 肩で息する顔からようやく赤身が消えた頃、専務は


「ところでキミ、至急、社長宅へ出向いてくれるか」

 といった。

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